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ミナリのYAEPINのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.2
セリ(ミナリ)のように強くたくましく共生していく家族の話。

韓国人家族が移住先のアメリカで開墾生活を始める、という設定から想像しているより、かなり社会性が薄かったように感じた。
舞台が1980年代とはいえ、アーカンソーの田舎の白人しかいない街で、移民への風当たりはまだまだ強そうだが、そこまで邪険な人はいない。少なくとも表向きは好意的な人ばかりだ。
そもそも全体のストーリーが、5人家族の中で完結するものが多く、外部からのファクターによる影響が少なかったように感じる。

もちろん社会的な背景を映すから良い、という訳ではないが、この時代と舞台設定にしてはストーリー展開がやや閉鎖的だった。

家族の農業を手伝うことになるポールという人物がかなり興味深かった。トラクターを父親に売ることで家族と知り合うのだが、身なりがみすぼらしく、独自の方法でキリスト教を信仰している。一見怪しすぎるが気は優しい人で、なんだかんだ家族に受け入れられている。
ある評論で、「世が世なら彼は陰謀論者のトランプ支持者」という旨が書いてあって面白かった。

演技はみな素晴らしかった。特に子供2人は顔もそっくりで、仕草から何まで演技には見えなかった。
父と母は厳しいが、その分子煩悩で、愛情深いキャラクターが伝わった。ただ父に関しては、子供がいては難しい夢があるのに、なぜ子供を設けたのか、と思ってしまう。
おばあちゃんは前半と後半の演じ分けが見事だった。後半になってなぜ急に家事を手伝い始めたのかはよく分からなかった。

終盤で大きめのイベントが発生するが、その後のリアクションが少なめで余白が残されており、潔い終わり方だったと思う。
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