「原作の良さを活かしきれず中途半端に」
原作は映画鑑賞後に読みました。
大橋裕之さん原作作品は映画「音楽」で初体験し、直近では今泉力哉監督と共同脚本の「街の上で」の独特の会話劇が楽しめ、本作でもそんな会話劇を期待していきました…が
原作の魅力はシンプルな線のキャラクター達のちょっとシュールな会話が魅力のコメディのはずですが、その良さが出てなかったのが残念でした。問題は監督の演出とキャスティングにあるかと。
竹中直人さん、山田孝之さん、斉藤工さんが監督との事で人脈を活かしてか豪華な有名人の方々がキャスティングされてますが、そのため演技に感情が入りすぎているのか独特な世界観の魅力を削ぐ結果になっていました。
比較をすると「街の上で」のちょっと素人達のようなクセのある独特なキャスティングであったり、「音楽」のようにあのままの絵柄とあえて棒読みぽい演技などが大橋裕之作品にはマッチするのではと思ってしまいました。
ただ斎藤工監督部分の「伴くん」というお笑いコンビのコウテイ九条ジョーさんと森優作さんの2人のストーリーは笑えたし、演出も素晴らしいかったです。
さらに元々はそれぞれ別の話の完全にオムニバスの短編集である「ゾッキ」を無理に一本の映画にするために、それぞれの登場人物達が同じ街にいる。という設定にして会ったりするのですが、それだけ目的のシーンなのでまるで意味がなく、ストーリーも進みません。
さらには「秘密」をテーマにしてるのかもしれませんがそもそも別のストーリーなので、何とかひねり出したテーマにすぎず、それでまとまる訳でもありません。
結果それぞれの関わりが何かの展開に繋がるならいいのですが、ただ会うだけならいっそ原作通りに完全にオムニバスの短編集の映画とした方が良かったとさえ思います。
斎藤工さん監督部分以外は原作の魅力を引き出せなかった所が残念。キャスティングと演出の大切さを再確認できました。