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MINAMATAーミナマターのagatheのネタバレレビュー・内容・結末

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドキュメンタリータッチの映画であると言うことと、水俣公害を扱った作品と言うこと、そしてまた変な日本の描き方をされてるのかもなんて思っていたので結構見に行くのはどうしようかと悩んだ作品。
重いテーマで日本がどう描かれるかも不安だったのですが、映画を見た人のレビューを見て行ってみようと行ってきました。

想像に反してきちんと日本を描いてくれた作品でもあったのは見る前の疑念を1つ払拭してくれました。
日本語もおかしくない!
熊本弁を早口でいわれると日本人の私でもえ???って聞き取るのに苦労する部分もあったけれど、ちゃんとした日本語で安心しました。
日本人はチッソの前のデモで参加者が来ている白装束の意味、「怨」の意味は十分理解できるけれど、外国で上映されるときにはちゃんと説明がはいっているのかしら。
日本独特のものなのであれが説明なく1シーンとしてスルーされるのはちょっと残念。
日本以外での地域での上映ではギャプションが入っているといいなぁと思う部分の1つ。

今回もジョニー・デップがいい意味で「化けて」います。
特に実在の人物だから似せる努力を惜しまないんだろうね。
今回も似てるじゃんと思う部分多数あり。
いつも思うけれど一流の芸術家はろくでなしでもかまわないと思うの。
そこから高尚なものが生まれてくるのであればわたしは問題ないと考えるのです。
ユージン・スミスの堕落ぶりは写真に自分の魂を売り渡したなれの果てなんだろうと思えたの。
戦場カメラマンでもある彼の繊細さがアルコールに逃げる原因だと思う。あの繊細さがあるから素面では戦場での記憶に向き合えず、ミナマタの患者たちと向き合えなかったのだろうと思う。
だって現実が痛すぎるもの。
その痛みをわからない人はあんな写真を撮れないし、撮らないし、厳しくても優しいまなざしの作品にはならないのだとおもう。
ジョニー・デップはいい演技をしてくれたなぁ。
ライフがミナマタ病をとりあげてくれたからこそ、日本での訴訟が動いた部分も大きいだろうと思う。
ライフも経営難の時代だったというのは思いもよらない視点だったので、社長とスミスの関係も見ることができてひとつ知識が増えました。
熊本で暴行を受けても写真を撮り続け、傑作を残していったユージン・スミスは日本人は知っておくべきでないのかと映画を見ながら考えた。
スミスがアイリーンと結婚し、日本を嫌いにならないでいてくれたことは日本人としてほっとする。

スミスがジャズと人生は一緒。全ては即興である、というのは名言だと思う。
ジャズを愛していたからこその台詞なんだろうけれど、アキコを抱きながら歌うジャズが胸を締め付ける。

エンドクレジットで世界各地で起きている公害病のリストはミナマタだけではない公害についても考えてほしいという監督のメッセ時だろうと思う。最後まで考える映画でした。

あの当時のチッソの社長は雅子妃の祖父なんだよね。
あの公害を引き起こし責任を後任に引き継いでやめているけれどそこは1文クレジットしてほしかった。

問題はいろんな意味で根深いミナマタ公害。
日本人ではない視点もあるいい作品だったと思います。
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