なつこ

あの頃。のなつこのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
4.0
中学10年生とは、上手い表現。
「あの頃」は、あの時にしかない。
だからって、そこにしがみつき後ろを向いて生きるのではなく、その過去があったから「今がいちばん楽しい」を更新できるんだと、改めて思った。

嬉しそうにあややのポスター貼りながら「もう一度青春をやり直す感じがして」という剱くんのセリフに、いいね♡100回くらい押したい!
大人になってから、あんな風に新しい仲間と出会い、無意味な楽しい時間を過ごせるなんて、なかなか無い。
まさに青春。

「推し」という共通言語があるだけで、そこには謎の居心地の良さが生まれる。
もちろんコズミンのような面倒臭い人もいるけど(笑)
でもそれも込みで青春だと思う。

でも楽しいだけでは生活できないし、将来が見えないままでは、不安もある。
いつかみんなそれぞれの道を歩き始める。
仲間も、自分も、そして推しも。

性欲と、それで自分が生きていることを確認するコズミンをクズとも言えるけど(笑)人としてリアルだなと思った。
自分はこんなに性欲があるから、まだ大丈夫。そう自分に言い聞かせてるように見えたから。

コズミンのエピソードで、ガンで逝ってしまった親友のことを思い出した。
「余命宣告されるか、完治するまで誰にも言わない」と決めていた親友は、余命宣告される前に急変して、突然逝ってしまった。

いつもビックサイトで集まるメンバーが火葬場に集い、わんわん泣きながら、でも遺影の写真が酷すぎてみんなで泣きながら爆笑した。
きっと「この写真はないわー」ってあの世から突っ込んでるよね、と。
(写真が嫌いな子だったので、選択肢が無かったらしい)

彼女が亡くなる前夜が、彼女の推し、ニノ主演ドラマの最終回だった。「最終回は見れたのかな?」煙突の煙を見ながら、仲間とそんな話をしていた。

橋のシーンはずるいなぁ…。
あそこで涙腺が完全に決壊した。
エンドロールが終わってもえぐえぐ泣いていた。客電がついても席を立てなかった。
家で見ていたら、声を出して泣いてたと思う。
感動なのかノスタルジーなのか、なんの涙なのか分からないけど、止まらなかった。

「面白かったねー」と笑って横を通り過ぎるOLさんと私は、同じスクリーンで、きっと全然違うものを観ていた。
でもそれでいいのだと思う。
なつこ

なつこ