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あの頃。のchidorianのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
3.8
松坂桃李演じる劔がふとしたきっかけで松浦亜弥を見て涙を流し、崖から落ちるようにアイドルに嵌まるというのはドルオタあるあるで、私の場合は2011年のももクロがそれだった。
以来今まで様々なアイドルを追いかけてきたけれどハロプロ界隈はお勉強の範囲でしか知らないし、自分の「あの頃」とは時代も場所も違うこの映画をどう感じるか、鑑賞前には若干の不安があった。
観終わってみればそれは杞憂で、彼らには大いに共感したし、細かくは書かないけれど随所に良いシーンがあった。

これは今泉監督がしばしばやることらしいのだけれど、脚本にある台詞を言い終わってもカットをかけず役者に芝居を続けさせて撮る手法。知っていて観ると、このシーンはそうだなと思うところが何か所かあって、ちょっと演劇を観ているような感覚になるのも楽しかった。
時代や場所や夢中になる対象は違っても、この映画を観ると自分の「あの頃」を語りたくなるんじゃないかな。どうだろう。
男性ホモソーシャルの悪乗り感、監督は観客を置いていかないように気を付けたとインタビューで答えていて、私はとても愛おしく感じたけれど、例えばハロプロを知らない女性にはこの映画がどう映るのか興味がある。この後他の人のレビューも読んでみます。

劔が観るMVなどは本物が使われているのに、握手会に出てくる松浦亜弥はBEYOOOOONDSの山崎夢羽が演じていて、下手をするとシラケてしまうところだけれど全く問題なく、素晴らしくあややだった。

音楽が長谷川白紙というのにも驚いた。ノスタルジックの極北にあるような音楽だと思っていたけれど、実際に観るとちゃんとマッチしていて、しかも紛うことなく長谷川白紙だったのは凄い。
あと、これは監督が話していたことなんだけど、映画序盤で劔が歌う早川義夫の「サルビアの花」、なんと、使われなかった長谷川白紙バージョンが存在するらしい。これ、埋もれさせちゃっていいの?なんとかして聴かせてほしい!
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