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ラスト・ショーのfilmtravelerのレビュー・感想・評価

ラスト・ショー(1971年製作の映画)
3.9
監督はペーパームーンのピーターボクダノヴィッチ。映画館の主人サムを演じるベンジョンソンは助演男優賞。主人公サニーと関係を持つ年増のルースを演じるクロリスリーチマンは助演女優賞。町で一番の美人ジェイシーを演じるシビルシェパードは『タクシードライバー』でもデニーロを惑わす美人政治活動家を演じている。
青春とは、光る汗と友情と純愛などで彩られる美しい姿ではない。青春の現実は、退屈で、形だけの恋に落ち、大人の真似をしてみたい欲求と興味本位の衝動的な行為が多い。周囲の大人たちは冷めた現実を暮らしており、反抗しながらも、やがて自分たちも同じような大人になっていくことを受け入れていく。いや、本当は自分たちもそのことに本能的に気づいており、だからこそ、刹那的にであっても、ことさらその時間を必死で真剣にふざけて過ごすのかもしれない。
大恋愛を一生の宝物として過ごす映画館主人のサム。
町で一番の美人で、裕福で厳格な家庭に育ち、親に反抗しながらも様々な男を惑わし続け、やがて、街を去るジェイシー。
フットボールコーチの妻であり、寂しさから、自分と関係を持ってしまうルース。
フットボールのスター選手で失恋後、軍隊に入隊を決め、任地へ向かうドウェイン。
障害を持ちながら、いつも道路を掃除していたビリーの死。
常に流れるカントリーミュージックが、暗くなるのを防いでいる。
そのどれもが、大人になって語られるとき、初めて、青春は輝き始めるのかもしれない。