TAK44マグナム

ビニール袋の夜のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ビニール袋の夜(2018年製作の映画)
3.6
地球はビニール袋の星。


フランス産の奇妙奇天烈な短編アニメーション。
ジャンルはパニックホラーになります。

40歳を目前にひかえた女性アガットはどうしても子供を産みたい。
そこで、一度は別れた彼氏のマルクがDJをしているパーティ会場を訪れます。
なんとか復縁してマルクの子供を産みたいと願うアガットでしたが、そんな彼女の悲痛な思いとは別に、全人類(どころか全地球の動物)に絶滅の危機が迫っていたのです。
その元凶は何とビニール袋。
そう、スーパーやコンビニの商品を入れたり、ゴミを入れたりするあのビニール袋です。
突如として意志を持つに至ったビニール袋が大量に出現、なりふりかまわずに目についた(目があるか知りませんが)人間や犬や鳥に襲いかかる事態が発生!
パーティ会場も襲撃され、マルクは片足をビニール袋に喰われそうになります。
アガットとマルクは逃げ出しますが、もうその頃には街のそこらじゅうで(多分、地球全土)ビニール袋による殺戮が行われていました。
そんな絶望的な状況下でもアガットの子供が欲しいという欲求が冷めることはなく、狂気が更なる狂気を呼ぶのでした・・・


昨今は環境問題が声高に叫ばれていますね。
そのひとつに、ビニールやプラスチック製品の大量ゴミ化問題があります。
自然に分解されることなく、海や山をはじめとしたあらゆる自然に積もり続けているこれらの化学合成品をどうにかしなかれば、近い将来、とりかえしのつかないことになると、多くの識者の方々が警鐘を鳴らしています。
ストローが紙製に切り替わったり、買い物時に配布されるビニール袋をやめたりと細かい努力もなされていますが、解決にはとても程遠いのが現況でしょう。 

そんな環境問題に絡めて、主人公が抱える「女性として抗えない本能」による男女間の問題を描いていますが、一見すると接点のなさそうな二つの要素のケミストリーが何を言いたいのか?
もしかしたら、未来を託す子供ではなくゴミばかりを生み出すようになった人類を揶揄しているのでしょうか?
そうなると、少子化のトップランナーである日本人は恰好のターゲットとして狙われる一番手ということになってしまうのでは・・・(汗)
恐ろしい!
やはり買い物はマイバック持参にしないといけませんね!


全体的にトーンが暗く、独特で陰鬱な雰囲気のアニメーションで、とにかくビニール袋の動きが気持ち悪い。
ウネウネと這い回ったり、ユラユラヒラヒラと空中を飛んだりして人間の頭を包み込んで窒息させたり。
はたまた大きな袋になると丸呑みにしたり。
捨てられたコンドーム(?)までもが小動物を喰ってしまいます。
そしてついにはアガットを襲い、その結果、信じられない事が起きるのですが・・・

いやはや、今までクリスマスツリーやバナナやトマト、ドーナッツやらタイヤと、様々なものが人類の脅威になる映画を観てきましたが、ビニール袋までもが牙をむいてくるとは本当に世も末です。
これは実写化しても面白いのではないですかね。
アレクサンドル・アジャあたりが監督して、もっと血飛沫プッシャー!なスプラッタービニール袋ホラーにしても良いかもしれません。
白いビニール袋に血がたまって真紅の風船みたいになるとか。
ペニーワイズも喜びそうじゃありませんか!
コンドームがキュッと締まってチ●コがブチ切れるとか、黒いゴミ袋がたくさん合体して巨大化、そのまま家一軒を丸呑みにして住人皆んなが溶けちゃうとか、そういった過激なビニール袋の怨念を是非観てみたいですね!

そういえば、海に人喰いビニール袋がプカプカと浮いている場面で思い出したことがあります。
昔、デートで横浜港に行った時、隣に小学生の男の子を連れた親子がいて、波間に浮かんでいたビニール袋が生きているように見えたのか、お父さんが「ほら、クラゲがいるよ!」と指差したのです。
すると、すぐにビニール袋であることが分かったのか、「なんだ、ビニールクラゲだったのか」と苦笑いしながら誤魔化しているのを聞いて、その時一緒だった当時のカノジョとの間でしばらく「ビニールクラゲ」がプチ流行しました。
ただそれだけのどうでもいい話なんですけれどね(汗)
あの時のビニールクラゲが人喰いじゃなかったから現在の自分が存在するわけでして、グレタさんじゃありませんが環境問題は深刻なレベルですので日頃から気をつけないといけませんね。
ちゃんとリサイクルするために、ゴミはキチンとルールに則って捨てましょう!

・・・などとテキトーに締めつつ(汗)、少し観念的な作品ではありますが終末系のパニックホラーがお好きな方は(Vimeo等でも無料で鑑賞できるようですし)一見の価値ありかと思います。


青山シアターにて