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ビニール袋の夜のhorahukiのレビュー・感想・評価

ビニール袋の夜(2018年製作の映画)
3.5
モノクロに近い抑えた色調の画面に、映えるようにカラフルなビニール袋たち。もちろん環境問題を扱った作品なんだけど、色合いからも分かるようにビニール袋を主役サイドとして配置し、『エイリアン』がチラつく繁殖ルートを示すことで、地球最後の生物(生物じゃないけど…)はビニール袋だ!と人間サイドを皮肉ってくるトンデモなお話に驚き!

そうなるとビニール袋の生みの親は当然人間なわけだし、恐らく意思のある彼らがどんどん知的生命体として進化していくだろう過程において創造主として人間を崇めるような信仰が形成されていったりするのかな〜とか想像すると面白い。途中でオッサンが言ったようにガチで別の世界に行ったのかもだけど…。そうなったらそうなったで信仰の対象になるんかもね。

じゃあ人間って誰のビニール袋だったのかな〜っていう『プロメテウス』的な壮大さすら本作は匂わせてくる。「人間は地球環境にとっての害悪だ」って描く映画はクソほどあるけど、人間っていいもんだねって描くハートフルな人間ドラマだったり、誕生を素晴らしいものだと描くポジティブな映画はそれ以上にあるわけで、仮に人間もビニール袋も誰かによって作られた害悪なのであれば、害悪な人間と同じように害悪なビニール袋のハートフルストーリーがあってもいいじゃないっていう皮肉の塊のような発想が堪らなく好き。

ビニール袋と邦題はなっているけど、原題と英題はプラスチックなわけだからプラスチック含め地球に戻らないモノ全般的に本作は扱ってるんやろね。動物を殺したり、人の体に不具合を与えていくなんてのも、投棄された廃棄物だったりトランス脂肪酸等の有害物質を次々に取り込んでしまったが故に人間や動物が致命的ダメージを受けていく的な描写なんだろうし、そう考えるとそんなものばっかり摂取した人間による「誕生」の意味合いも色々と想像できる余地が膨らんでいくわけだから面白い。喜びの涙か死の涙か。そしてどういった種類の喜びか。面白かった!
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