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泣く子はいねぇがのmmmのレビュー・感想・評価

泣く子はいねぇが(2020年製作の映画)
4.3
佐藤監督の故郷である秋田・男鹿のなまはげ(重要無形民俗文化財とのこと)
伝統文化と幼少期の監督自身の体験から着想を得てつくられた、青年のなかなか成長できない物語であり親と子の話。

親になったが親になりきれず、大人だけど大人になりきれない主人公のたもつ(仲野太賀)
妻のことね(吉岡里帆)からは呆れられ、ついには愛想をつかされてしまう。
逃げるように上京したものの、のらりくらりの日々の果てに気付いたことは…


この作品においては、男はいつまでたっても子供だとということと東北女の気丈さが対比されるように描かれていて、自分やパートナーに思い当たるところがある方には、少しばかり胃が痛くなるかも。

仲野太賀さんの“今どきの若者”といえば「ゆとりですがなにか」が強く印象に残っているが、この作品においては180度異なる面倒臭さ。
とにかく煮えない。
そんな煮えないたもつが、(超絶)遅ればせながら、何かに気付き行動に出る終盤のシーンは圧巻でした。
ラストシーンでガツンとくらいますが、そこに折坂さん“春”が本当に沁みた。

そして、ことねを演じた吉岡さん。
まさに、見てみたかった吉岡里帆だったなぁ。
強い眼差しがすべてを語っていて魅力的。

志波を演じる寛一郎さんは、目力が凄く強いのに、そこに引っ張られない雰囲気を出すし、余貴美子さん、山中崇さんは、観ていて安定・安心といった感じ。

エンドロールをチェックすると「あの方も!」という面々が出演しており、それも見どころ。

ストーリーにも映像にも、なまはげのシーンが盛り込まれており、作品の重要な鍵になっている。
序盤の夏井会長(柳葉敏郎)のシーンはひとつのポイントであり、後半に繋がっていくと思う。
佐藤監督、ここから凄いことを思いついたのだなぁ。
長らく続く文化にはちゃんと意味があって、よそ者が言うのは簡単かもしれないけど、この先も続いていってほしいなぁと思う。

厳しい現実を見せつけられるけど、日常のところどころに可笑しみもあり、地味で静かで、だからとても味わい深い作品でした。

個人的にはラストもだけど、保育園のシーン、凄く好き。

“人生は、いつもちょっとだけ間に合わない”
是枝監督の「歩いても歩いても」に出てくる台詞ですが、いまいちどそれを思い出させてくれる作品でもありました。


おまけ
分福ってBUNBUKUなんですね。(BUNPUKUだと思ってました)
mmm

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