とりあえずこれほどのボリューム感のある映画が大型シネコンでなくPrime Videoで限定公開されるということが現代的というか。
製作側からすれば巨大なスクリーンと迫力のある音響で観てほしいと思うはずだけど、コロナ禍という情勢だけではなく、今の映画業界はシネコンの興業ありきではなくなっている、ということなのだろう。
悲しくもあるが、気軽に(しかも限りなく安価で)新作を鑑賞できる、ということがうれしくもある。複雑な心境である。
堂々たるビッグバジェット感にあふれた本作は、王道の終末モノだ。
荒廃した未来へタイムトラベルして地球外生命体と戦う、という何とも既視感に満ちたログラインなのだけど、VFXをふんだんに使ったリッチな映像表現の豊かさで惹きつけられる。
非常に快活で小難しいところは一切ない、チープギリギリまでエンタメに振り切った態度も悪くはない。
ご都合主義的でプロットのグラつきやテキトーさは散見されるものの、「ド派手で泣ける!」というハリウッドスタイルを全力で踏み抜いている感じが無邪気に思えてきて何だか憎めないのである。
そう感じさせるのは、クリス・プラットの剽軽ながらも頼もしい、というステレオタイプなキャラクターをそのままに生かしていることによる部分も大きいと思う。
二枚目と三枚目の境界線をふらふらと行き交う彼の愛嬌が本作全体に通底していて、完全にSFなのにどことなく温もりというか、人間味を感じさせるような手触りがある。
『パッセンジャー』でもそうだったけど、セルフブランディングが非常に巧い役者だと思う。
過去のSF名作の数々をサンプリングしたような器用で手堅い作りだと思うものの、それは同時に本作ならではのオリジナリティが希薄であるということでもある。
映画愛に溢れた大味エンターテインメントとして愛でたい一方で、記憶に残る・何度も観たくなる映画かというと残念ながらそうではなかった。
とはいえステイホームで娯楽が不足しがちな今、こういう映画を配信してくれるということ自体には最大限のリスペクトを送りたい。