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トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャングのRockoのレビュー・感想・評価

2.8
Fan’s Voiceオンライン試写にて。
19世紀オーストラリアで権力と差別に立ち向かい、英雄として名を遺した伝説の反逆者ネッド・ケリーを英雄の視点ではなく、悲惨な境遇から抜け出すために苦悩する一人の人間として描き出した作品。

まず俳優陣が豪華でそれぞれの演技が素晴らしい。
主演のネッド・ケリーに『1917 命をかけた伝令』のジョージ・マッケイ(発音はマッカイ、マカーイらしいです)、ブッシュレンジャー(盗賊)のハリー・パワーにラッセル・クロウ、警官のフィッツ・パトリックにニコラス・ホルト、オニール巡査部長にチャーリー・ハナム、『ジョジョ・ラビット』でユダヤ人の女の子を演じたトーマシン・マッケンジーも出演。

この作品を観る前は残酷、陰鬱、重いとのイメージだったのが、観終わってみたら同じオーストラリアの植民地時代を舞台とした『ナイチンゲール』の方が何倍も辛くて重かった。
タイトルに反して「真実の物語ではない」と宣言されているので、この作品のネッド・ケリーが史実と同じではなくフィクションだということは明らかで、登場人物の名前や関係などは史実と同じでも出来事は架空のものだと想像がつく。

日本ではあまり知られていないネッド・ケリーだが、オーストラリアでは誰もが知る有名な盗賊で「ケリーのように勇敢に(as game as Ned Kelly)」という言葉があるほど。
様々の悪行を犯したネッド・ケリーがなぜ民衆に人気があり、今まで英雄視されているのか?この作品はここにスポットを当てておらず、幼少期から青年時代に残酷な時代と不遇な環境で育った一人の人間として描いている。

⚠︎以下、公開前なのでストーリーはネタバレしていませんが、前情報を入れたくない方は読まずにおいてください。

権力者の横暴からなる警察への反抗、家族や仲間への不当なな扱いへの苛立ちや長男の責務に苦悩するジョージ・マッケイの表現力は素晴らしく、ラッセル・クロウはさすがの貫禄で作品を引き締め、ニコラス・ホルトの歪んだ性格のキャラクターもかなり良い。そして無駄に男性陣の全裸が多い。(ボカシあり)
トーマシン・マッケンジーちゃんのサービスショットもあり。

役者陣がよいので一つ一つのシーンは緊張感があってよかったが、それも銃を突き付けるの繰り返し。
男らしさを誇示する時代の英雄をドレスやゲイ描写で中性化させ、フィクションとは言えここまで現代の多様性に合わせて改変する必要があるのだろうか。
(試写のアフタートークでも”男らしさを修正した”と大阪大学大学院教授の方が発言されてました。)
よく言えば創作の力、悪く言えば歴史の捏造。
この作品でのネッド・ケリーは勇敢な英雄としてのカリスマ性はなく、幼少期の環境から警察に反抗した犯罪者のマザコンにしか見えずとても残念でした。
本国オーストラリアでの評価が気になるところですが、今のところ辛口の方が多い感じ・・・
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