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事故物件 恐い間取りのドントのレビュー・感想・評価

事故物件 恐い間取り(2020年製作の映画)
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 2020年。説教部屋行きです。事故物件住む芸人・松原タニシのノンフィクションを基に描かれるホラー……のようななにものか。 
 ホラーとしてはごく一部のオッと思わせる瞬間を除いてはほぼなんも怖くない。オバケは見せすぎだしなんか明るいしここに出るな、と思った場所に出る。ヒロインのリアクションが見事なので霊が一切映らずヒロインが怯えるだけの方が100倍くらい怖かったのではないか。
 ホラーではなく、「苦節10年、まるで芽の出ないタレントが藁をも掴む思いですがったのが命を削るこの芸風でした」という芸人残酷物語としては大変せちがらく面白く観れる。ド滑り倒しの冒頭、プロデューサー(木下ほうかが名演!)へのヘコヘコ具合、「霊が映ったぞ!」となった時の若干嬉しそうな表情、一転著名になってからの引き返せなさ……嗚呼リアル……芸能界はおそろしい場所じゃ…………
 そういう方面で攻めて最後は主人公が無残に死ぬくらいの展開を期待していた。死ななくても「魔窟」としての芸能界の怖さが最後に結実したら面白いよな、とワクワクしていた。ところがどっこいクライマックス、フェスがはじまった。一般参加者による前夜祭からの神主による本祭が開始せられ、そして「フーッ! フーッ!」バチバチバチーッ……そして悪魔は……きえた……しかし……の流れを私は終始真顔で観た。なんなのだこれは。
 こういう展開は「こういうこともありうる世界観」を丁寧に作り上げてからぶっこんで来るべきであり、マジな手触りの芸人残酷物語に無理くり流行りのこういうアレを接ぎ木してお出しした感がすさまじく何というかちゃんとやってほしい。ちゃんとホラーを撮ってほしいしちゃんと人生を生きてほしい。それくらいの説教をしたくなる。
「よく見ると美男だかなんかこうダメ男くんオーラが出てるし芸人としてはまぁ売れねぇだろうな」な主人公とその相方を亀梨&瀬戸がきっちり演じていてその点は見事であった。ダメ男だけど顔面がいいので眺めがよい。主演三人はよかったので彼らをそのままにスタッフだけ変えて、遊びのないクッソ怖いホラー『事故物件2 恐い家』を作って観客全員を失禁に追い込んでほしい。まったくもう…………
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