「ヤマメ~!後ろ、後ろ~!」
勝手にドアが開いたり、赤い服の女が現れたりするたび、ラストまでずっと心の中でツッコミまくっていた。さあ、次は何が起きる?と、まさかホラー映画でこんなにワクワクする気持ちになろうとは。
事故物件に次々と移り住むという話では、池田エライザ主演の「ルーム ロンダリング」があるが、こちらは成仏できない地縛霊が相手であり、そんなに怖くはない。本作ではガチで殺りにくる怨霊が相手なので、命懸けだ。しかしながら、その様子を観客としてメタ的に眺めていると、ドリフのコントのように見えてくるから不思議だ。
それぞれの部屋で異なるタイプの心霊現象が起きるので、飽きずに見られるのもよい構成だ。
恐怖演出そのものは、ホラー映画のセオリーに則ってしっかり怖いものに仕上がっている。ただ、状況的に面白くなるよう巧みな仕掛けがしてあり、電話口の向こうでは霊に襲われて大変なのに、のんきに小籠包を食べているシーンは爆笑した。
音などでビックリさせる演出に走らず、事件の痕跡を断片的に見せていき、気づいたらぬるっと霊が現れている見せ方も、好感が持てる。ホラー映画では、暗い部屋で明かりも点けないという謎の場面がよくあるが、本作ではちゃんとスイッチを点けて明るくしてから、勝手に消えるという演出をはさんでくる。
まあ、どちらかと言えば霊よりも、恐怖にひきつった梓(奈緒)の顔の方が怖かったのだけど。
霊と遭遇するほどに仕事は増え、成功していくという悪循環。
梓に、人を笑わせるのが夢だったんじゃないのと諭されても、後戻りはできない。でも、東京進出してすぐの昼番組では、しっかり笑いもとってたけどね。
それ以前に、亀梨・瀬戸のコンビだったら、ネタがつまらなくてもルックスで人気でるやろ…笑いに厳しい関西では、顔がよくても逆にハンデなのかなあ。むしろブサイクの方が有利?
関西の芸人なのに、関西弁が下手くそすぎるのも原因であるかも知れない。そのことは、二人の出身が九州で、えせ関西弁でしゃべっていたことが後にわかるのだが、そこまで計算された演出だったとしたら、逆に素晴らしい。
たまたまもらった厄除けのお守りが、しっかりと悪霊に効いたり(しかも700円って!)、あの傘が最後に活躍したり、動画配信中のコメントがまさにドリフの「後ろ、後ろ~!」と同じだったり、小道具の使い方も上手い。傘については、ヤマメが梓に告白する場面で使われるだろうと予想してたんだが、いい意味で期待を裏切ってきた。
ヤマメが売れても天狗にならず、影で支えてきた梓と結ばれるのも、ほっこりした終わり方で良かった。霊感が強すぎる彼女との生活は、ちょっとしんどいかも知れないが…。
それぞれの物件で、そこで死んだ人の霊が出るのはわかるが、ヤマメの後をずっとついてくるフードをかぶった霊は何だったのか。浮遊霊が集合してできた悪霊のようなもの?
もしかしたら、梓の霊感が悪霊を呼び寄せていた可能性も捨てきれず、ラストで再び悪霊が現れたのもそのせいか?などと思ってしまった。