まさ

モロッコ、彼女たちの朝のまさのレビュー・感想・評価

モロッコ、彼女たちの朝(2019年製作の映画)
5.0
本作、世界的潮流になりつつある、女性監督による「社会×女性」をテーマにした作品です。

僕が最近鑑賞した作品では「プロミシング・ヤング・ウーマン」「17歳の瞳に映る世界」がそれにあたるかと思いますが、女性視点の作品は「グサリ」と突き刺さります。

さて本作、まず目を惹くのは「フェルメール」の絵画のように美しい映像。さらに、自然な音や光の使い方も素晴らしかったです。

一方、抑え気味なビジュアルに反して、ストーリーの背景が重たい。

「婚前の性交渉や中絶が違法の国」モロッコで、未婚の女性が妊娠。臨月の中、ホームレスのように街を彷徨うところから物語がスタートします。

婚外子として生を受けた子どもは出生届すら出すこともできないため、この世の中に「社会に存在していない子ども」となってしまう。

夫の死に向き合うことができず感情を抑えながら生活をするパン屋のアブラと、出産しても自分で育てることができない現実の厳しさを抱えるけど直視できない主人公サミア。
アブラの娘の可愛さや、パン屋さんが繁盛する明るい要素との対比で、2人の繊細な心の動きが手に取るようにわかります。

そして出産。
授乳、名付けのシーンのあたりでは、切なくて、涙でスクリーンが見えませんでした。

女性だけがすべて背負い、それでも生き抜いていく。
とても繊細で力強い作品でした。

日本でも、女性監督による同様のテーマ作品を観てみたいです。
まさ

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