千年女優

息子の面影の千年女優のレビュー・感想・評価

息子の面影(2020年製作の映画)
4.0
メキシコに暮らす貧困家庭の母で、アメリカへ出稼ぎに行ったきり行方が分からなくなった息子ヘススを心配するマグダレーナ。断片的な物証から死を告げられるも決定的な情報を求めて国境付近を旅する彼女が、道中に出会ったアメリカから強制帰国した青年で母親を探すミゲルと共に僅かな可能性を求めて彷徨う様を描いたドラマ映画です。

メキシコの映画教育を目的とした国立機関で学んだフェルナンダ・バラデスが、年間で数百万人規模とも言われるメキシコからアメリカへの不法移民をテーマに脚本から手掛けた長編映画監督デビュー作で、トランプ前大統領の政策やコロナ禍で深刻化が続く問題に真正面から取り組んだことが国内外の映画祭で評論家からの評価を集めました。

自由貿易による大資本製品の大量輸入で仕事が奪われ、それならばと職を求めて移民を目指せば国境と銃弾に弾かれ、如何ともし難い貧困の中で互いに奪い合わざるをえない。そんなNAFTA締結以降のメキシコが抱える悪魔のような構造的問題を母のひとり旅を通して浮き彫りします。中米に巻き起こる熱風が癒せない渇きをもたらす一作です。
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