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This Is Not a Burial, It's a Resurrection(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.3
【レソトのおばあちゃん念を放つ】
みなさんは「レソト」をご存知だろうか?レソトは南アフリカ共和国の中にある小国の一つでありエスワニティ(旧スワジランド)と共に、世界地理好きの間でも人気の高い国である。さて、そんなレソトから一本の映画が現れた。『This Is Not a Burial, It's a Resurrection』はアイスランド・レイキャビク国際映画祭2020にて最高賞を受賞した他、第93回アカデミー賞にてレソト映画として初めて国際長編映画賞にエントリーされた作品である。そんなレソト映画を観てみました。

仄暗いバーのような空間をゆっくりゆっくりと360度パンさせながら、怪しげな男にフォーカスがあたる。彼は、レソトのとある物語を語りはじめる。ダムの建設で失われつつある村。宇宙人のようにも見える黄色い作業着を身に纏った男たちが不気味に画面に映り込む。そして、それを凌駕するようにMantoa(Mary Twala) の大樹のように深みのある彫りと反射が特徴的な悲愴顔が画面を支配する。このおばあちゃんは、村人が故郷を諦め新天地を探そうとすることに抵抗する唯一の婆さんとして登場する。子どもたちは皆死んだ。自分の人生もそんなに長くない。しかし、レソトの記憶毎ダム建設によって死んでしまうのはいかがなものか?彼女は喪服を着て、村人の前に立ち圧をかけ、孤独の戦いに挑む。しかしながら、時は刻々と前へ突き進んでしまう。

本作は、レソトだけでなくアフリカ大陸が持つ、侵略による諦めと抵抗を詩的に描いた傑作だ。何と言っても独特な青、黄、緑の色彩に配置されるMary Twalaから立ち込めるオーラが凄まじく、画面越しに殴られている感触がします。

その寡黙で圧倒的なオーラによって人が突然死んだりする。あまりに唐突な描写ではあるのだが、荘厳な画面構築によって説得力しかありません。この映画のもたらす魔法は、欧米のオリエンタリズムを満たすアフリカ映画に留まることなく、唯一無二の世界観で、土地の亡霊を捉えることに成功していました。

ちなみに本作の音楽は日本人の電子音楽家Yu Miyashitaという方が手がけている。
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