にくそん

MOTHER マザーのにくそんのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.8
どっぷり病んでぬめぬめと腐敗臭のする秋子を、なんの言い訳もつけないで描いたのが、映画にしかできないことで、よかったなあと思う。長澤さんはまた「脱がなかった」って言われそうだけど、脱いだ脱がない関係なしに、挑戦のある仕事をなさっていたと思う。ていうか脱がなくていいから。

カメラワークが結構お気に入り。秋子の顔に寄った画もいいけど、それ以上にロングショットが泣かせる。海辺で旅館の残飯を食べる三人が、つかの間たしかに幸せそうでせつない。とはいえ、ここでもし笑顔を大映しにされていたりしたら、なんか違うと思ったはず。大森監督のこの撮り方は好き。

奥平くんって綺麗な顔してるなあ。この映画では基本、垢じみた格好ばかりさせられてるんだけど、収監後の坊主頭姿なんかが美々しくてこりゃすごい。阿部さんは踊ったとこが面白かった。あとであれが台本に書かれたことだと知ったけど、そっちのほうがすごいよね。

夏帆さんの役どころには結構イライラしたけど(だって、まるで根性キマッてないっていうか、プロの児相職員のはずなのに、少女の自己満足レベルの手助けに終始していて、子どもに話しかけることはできても、大人と対等に話せてないんだよね)、ラストで彼女の幼稚さの背景は明確になる。この映画で一番ちゃんと説明された人かも。
秋子が何を考えていたかは最後までわからなかった。でも、それでいいんだと思う。
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