ドキュメンタリーだからの迫真さが際立つ。
表情や空気感が、演技とはこれほどまでに違うのかと思い知らされた。
盗まれた絵画の作者バルボラと、盗んだ本人カールが対面する。
それだけでも信じ難いことだけど、バルボラは責めることなく、カールの絵を描きたいと提案し、カールもそれに応じる。
そこから生まれるふたりの関係。
完成した絵を初めて見た時のカールの表情が忘れられない。
波打つような感情を抑えきれず、自分の生きてきた人生が、頭の中で走馬灯のように巡っていたかのように、感情があらわになっていく。
見ているほうもつい心を動かされてしまう。
孤独だった子供時代を過ごしたカール、その後も薬物に手を出しまともな人生を送れずにいる。
元恋人からDVを受けた、過去の呪縛に未だ囚われているバルボラ。
経済的にも苦境にたたされている。
それぞれの葛藤の中、生きているふたり。
そして、ラストに映し出された絵画。
しばらく身動きが取れなくなるほどの衝撃だった。