ドラマとしてはすこぶる面白いけれど、ドキュメンタリーとしては極めてウソ臭い。
ずっと「ドキュメンタリーのくせに何でそんな絶妙なタイミングで絶妙な位置にカメラがあるの?」とか「そもそも警察は何やってんの?」とか「ぶっちゃけ、これ、何テイク目?」なんて思いながら見てました。
結末に、これぞ芸術の力がもたらす奇跡よと崇高な感動を覚えるか、ゲッスいロマンスだと感じて冷めてしまうかは、見る人の性格の良し悪しで分かれると思う。
当方、性格はひねくれてて下世話なもんだから、ハナっから「どうせそういうこったろう」という予想通りのオチに波が引いていくようにサーッと冷めた。「アホクサ」と。これがドラマだったら素直に感動してたんだろうけど。画家が「私は対象者の手に惹かれる」って宣った時点で、それが答えだし。要するに、そういうことなんでしょ?と。
早い話が、ニーチェの『善悪の彼岸』(「深淵を覗く時~」ってヤツね)。画家が自分の絵を盗んだ泥棒に興味を持ち、彼を描くことで取り込まれ、徐々に壊れていくさまには映画的興奮を覚えた。
芸術家は根本的に狂っているし、狂っていくもの。時に静かに、時に激しく。そして芸術家に限らず、対象に見入られてしまうのは世の常なんじゃないでしょうか。そういや、自分でも心当たりあるわ。