ククレ

僕が跳びはねる理由のククレのレビュー・感想・評価

僕が跳びはねる理由(2020年製作の映画)
3.5
この映画をこれから観ようと思ってる人は、ぜひ先に東田直樹さんの「自閉症の僕が飛びはねる理由」を読んでほしいなぁ。なぜなら、この映画はあの本の映画化ではないから。あの本が世界中で共感、評価されたことで生まれたドキュメンタリーやねん。

翻訳したアイルランドのデイビッドミッチェルの息子をはじめ、インド、アメリカ、シエラレオネまで、様々な国の自閉症の人が出てくる。東田さんの文章を基にして、彼らの心象を表していく。だから、原作を読んでいないとイマイチわかりにくい。時々出てくる日本人のような男の子が東田直樹さん自身を表してるのかな?単なるイメージ像ならいらんと思うんやけど…。

映像がミョーに凝っていて、「自閉症の世界」を表現したのかもしれへんけど、なんか冗長やった。
彼らの見てる世界は本当に多種多様やと思ってる。「自閉症」とひとくくりにできないはずやし、きっと誰にもわからない。想像するしかないそれを、なんとか表現したかったんかな?無理があるで。

私が福祉学部の学生だった頃、ドナ・ウィリアムズの「自閉症だった私へ」という本を勧められた。いわゆる「自閉症の世界」を本人が表した作品としては画期的で、教科書みたいな扱いやったわ〜。

障がい者支援の仕事でいろいろと悩みながら働いていた頃、「自閉症の僕が飛びはねる理由」を読んだ。ドナ・ウィリアムズよりも簡潔でわかりやすく、読み物としても面白かった。仕事で関わる様々な利用者と重なって感動したんやわ。利用者家族にも「この本に救われた」という人もいたし、実習生に勧めたりもしていた。ホンマに素晴らしい本やで。

でも、この映画は原作とは違う。いろいろな国のいろいろな人が出てくるけど、特性や環境が違いすぎるから、自閉症を学びたい人の「入門編」としてはちょっと合わないかも。文字盤をあんなにうまく使う人を見たことないし。むしろ、「世界の自閉症のいま」を知れる興味深い作品やと感じた。
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