雷電五郎

ドリーム・ホースの雷電五郎のネタバレレビュー・内容・結末

ドリーム・ホース(2020年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

オンライン試写会で視聴しました。

話の展開は王道ながら共同馬主という複数人が権利を有する変わった形態であることで、ドリームアライアンスを育てたジャン夫妻を中心に馬のオーナー達の群像劇になっているため、個性的な面々の様子とあい待ってとても楽しめました。

起きた時に胸が高鳴るような歓喜が存在する。ただ生きていく、それだけならば人間には趣味も娯楽も必要はないのでしょう。ですが、生活にも人生にも感情が伴う以上、人は何も感じず何も変わらずには生きていけないものです。
共同馬主達はそれぞれが平坦な毎日を少しだけ変えられる何かを求めていて、それは物理的な趣味や娯楽というよりも精神的な情熱を強く望んでいたように感じられました。

競馬と言えば、ギャンブルではありますがこちらの作品ではお金を儲けることは二の次であって、ドリームアライアンスを信じて夢を託すという目的が主です。
生き物が相手なので当然、信頼と愛情が不可欠であり、信頼と愛情を注ぐ程、その馬はただ勝ち負けを定めるための道具ではなくなり自らの子供に等しい大切な存在になります。
ジャンを始め馬主達にとってドリームアライアンスは正に「夢」であり「高鳴り」であって、単にギャンブル熱を満たす道具ではないところが、観ている側にも思い入れを感じさせレースのシーンでは祈るような気持ちになりました。

冒頭、黒い画面から聞こえてくる音を最初心臓の鼓動のように感じましたが、実際はドリームアライアンスの蹄が土を蹴り駆ける音なのが非常に印象的です。
馬の力強い足音や走っている時の息づかいなども頻繁に描写されるので、ただ走るということにこれ程、命を感じさせる生き物もいないのではないかと思えました。

中盤、脚の腱を損傷してしまったドリームアライアンスの姿には胸が痛みました。
馬は心臓に血液を送るために走らなければならない生き物であり、走れなくなることは即ち死に直結します。脚を折った競走馬の安楽死は何かと批判を呼びますが、回復の見込みがなければ馬は心臓に血を送ることができず、じわじわと苦しんで死ぬことなり、一概に死が非道だと言えない部分もあります。

ドリームアライアンスは腱の断裂から運良く回復できましたが、走るために生まれ走ることで生きる馬が脚を怪我する姿は辛いものがありました。

ラストの村総出パレードではニコニコとしてしまい、人生にはこういう無二の喜びを感じられる瞬間て大事だなぁとほっこりします。観てるだけでもドリームアライアンスが優勝した際に拳を握ってしまうのですから、馬主達や村人にしたら嬉しいなんてものじゃないでしょうね(笑)

エンドロールでは話の元になったジャン夫妻とハワード夫妻ご本人が登場し、俳優さんとともに歌うという楽しいエンディングもあるので是非エンドロールまでご覧下さい。

仔馬や馬達が可愛らしくて大変満足でした。
雷電五郎

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