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サンドラの小さな家のERIのレビュー・感想・評価

サンドラの小さな家(2020年製作の映画)
4.1
すごい良かったんだよな。映画館で観られて本当に良かった。こんなに没入してアイルランドの一つの家族とその周囲の人たちのことを、まるで自分もそこにいるみたいに、感じ考えられるのは映画館だからこそだな。めちゃくちゃ集中した。

“ブラック・ウィドウ!!”


サンドラはDVを受けている。もう限界だった。冒頭から怖くて見てるわたしまで体が強張る。愛していた人の豹変ぶりは、フラッシュバックするみたいに思い出しては震えが止まらない。

モリーとエマの幼い二人の娘を連れて家を出た。駆け込む家もなく取り急ぎホテル住まい。家賃補助が出るとはいえ、仕事を掛け持ちしてなんとか必死に堪える毎日だ。大きな荷物を運ぶ細い腕は、まるで彼女の抱える大きな問題のようで苦しい。公営住宅は長蛇の列でなかなか順番が回ってこない。

国の制度もサンドラを助けるものじゃなくて、このままホテル暮らしをしていたらお金はすぐに底をつく。必死に考える彼女が、家を作ることを思いつく。少ない予算で雨風が凌げるような家を作るために3万5000ユーロ。自分の家を作るために動き出した彼女に周りの人たちも変わり始める。


97分の映画、80分ぐらいは泣いてた?と思うほどずどんとやられてしまいました。友達や恋人以外の周りの人との関係がどれだけ大切か、身に染みる作品だった。街の関係性が薄れているのは多分日本も同じなんじゃないかと思うけど、隣人の見返りを求めない手を差し伸べる姿に涙が止まらなくて。そして家が建った時のありがとうが、手伝った側がサンドラにありがとう!って言ってるのが印象的で助けることで助けられる意味をとても感じました。こういう社会が本当にいいよね。

そして、この映画はもちろん家がたったね、でおわらなくてDVの怖さと闇の深さが、サンドラと夫のママとの話に、もう号泣だった。ここで終わらせねば。

ラストもとてもいい終わり方で、この映画本当に大好きだ。DVが出てくるので闇雲に勧めたりはしないけど、それでも一人でも多くの人に観てもらえますように。遠い国の話じゃない。私たちの話だ。
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