柊

椿の庭の柊のレビュー・感想・評価

椿の庭(2020年製作の映画)
3.3
映像美としては文句はない。がしかし劇映画としてはどうかと問われれば、私的には不満足である。
もちろん富司純子、シム・ウンギョン、鈴木京香少ない台詞の中で存分にその存在感を発揮して物語の概要を表現してはいたと思う。でもひとつひとつ台詞はこの言葉、美しい日本語ですね。って感じ。ちょっと整えすぎ。そして一番の整えすぎは家の暮らし。美しい庭はこまめに庭師が入っていたようだけど、あの家をあれだけ綺麗に保つには人の手が必要なのに、絹子さんが家事をする印象がゼロ。お手伝いさんがいてもおかしくない風情だけどそこまではいなさそう。
でも埃ひとつ落ちてなさそうな家が逆に違和感があった。絹子さん毎日着物着て拭き掃除できるのかな?夏用に襖変えていたけどそれすら満足に出来てなかった。これまでは旦那さんがやっていたと言う設定?でも若い時おてんばだったらしいのにすっかり深層の奥様。
家具も食器も果物もスイカを冷やすバケツすら銅素材のオシャレ加減。しつらえてあった花もとにかく美しいけど…桐島かれんの影がどうしてもチラついた。でも麦茶の氷すら美しい。だから〜整えすぎなんだってば。

そしてこの内容で2時間越え。あまりにも静止画像にこだわった結果だと思うが、もっとコンパクトに、まとめた方がより品が出たのではないかと思う。絹子さんが着物を着替えるシーンだけでも魅力がある。御年いくつだからわからないけど、夏の着物を着て、はしゃいで階段を駆け下りていくなんて、並の高齢者では絵にならん。なのに静止画像が長すぎてテンポが悪い。もちろん写真家故のこだわりもあるのだろう。でも観ている方はあ、次来るよって分かってしまうのだ。そこで気が抜けるから眠気が襲ってくる。

亡くなった人との思い出の宿る家。これを手放すのはなかなか勇気のいる事だ。それも理由が相続税。ん〜日本の税制度どうにかならんかね。分割も出来ず現金で一括支払いって厳しいよ。だからどんなに素敵な家屋でも日本の税制度の中ではいずれ消えていく運命のもったいない家屋がいっぱいあるんだろうね。
全く田辺誠一!なんて事してくれる。そしてなんでこの役?と疑問符しか無いチャン・チェン。カタコトの税理士?はぁ?そんな税理士になんの忖度があって大事なこと頼むかな?まるでわからなかった。この家の良さをわかってくれる人と言っていたのにお前は詐欺師か?
チャン・チェン何度も言うけど本当に役の意味わかっているの?全くの無駄遣い。出なくて良かったのに。出るならもっとカタコトの日本語で辻褄が合う役にしてもらってね。
好きな俳優さんなのに残念の一言。
そしてこちらも数少ない好きな韓国人俳優のシム・ウンギョン。これはカタコトだから成り立つ役でもう言う事なし。ちょっと毎日どこに行っているのかわからなかったけど、仕事?学生?でも少ない言葉を補うちょっとした動作等々やっぱり一番魅力的。衣装も全て良かった。
鈴木京香が顔が小さくて驚いた。

最後にこの作品の一番の主役である葉山の高台の古い家。木立に囲まれたその全貌をどこかで見せて欲しかったな。門から玄関までのアプローチもちょっとした上り坂みたいだったし、あ〜できれば海から見た家の全貌も見たかった。

こういうジャンルの作品って、ある一定のファンがつくと思うけど、綺麗な映画ですね。って感想が一番多いってどうなんだろう?家も住む人も夢まぼろし如く。幻影と思えば良いか。
柊