ジョー

ファーザーのジョーのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.5
拝啓、覚えてないあなたへ。覚えていますか?

ボケかけている老人とその娘や家族のお話。
何回も同じことを説明しても毎回別の箇所の記憶が抜けて意味不明なストーリーが頭の中に出来上がるのが恐怖で仕方なかった。
主に年老いた父親視点で物語は進んでいく。記憶だけが欠け落ちて、精神は保たれているので扱いが難しい。雑に扱われていることがしっかりと伝わる。しかし言葉は通じるのに話が通じない。このもどかしさは、幼児に対して抱く感情と似ているかもしれない。

これ以上私達を苛つかせないでくれ、その刺々しい言葉は血縁にはない家族が何千何万と飲み込んできた言葉だと思う。これは感動的な家族愛を描いた映画なんかではないと思う。現実を現実として描くだけではなく、しっかりと映像でも惹きつけようとしているのが伝わってくる。
1枚の絵の様なカットの連続は『ホモ・サピエンスの涙』を思い出させる。
フランス特有の淡くも鮮やかな色使いがとても心地よく目に残る。
ジョー

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