朝田

ファーザーの朝田のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.9
信頼出来ない語り手映画の傑作。予告編はマジで詐欺。介護を乗り越える親子愛の賛美なんていうものに中指を立てるメチャ怖い作劇。題材の描き方としていたく新鮮に感じた。とにかくこの映画の面白さの肝はとにかく視点をホプキンスからブレさせないことだと思う。彼のどこまでが妄想か、現実か、現在か過去か全てがはっきりしない視点を観客が共有することで最後まで何が起こるか分からないサスペンスが持続する。ここが明確だからこそ91分というタイトな尺で描きたいことが凝縮されている。無駄が無い。ほぼ全編室内での会話劇だが、細かいライティング、内装の変化で画面の単調さを避け、サスペンスとしてより強く構築しているのも実に巧妙。特に夜間の室内の撮り方はほとんどホラー。アンソニーホプキンスの演技に対する距離感も適切で、いくらでも演技を見せびらかすように長回しで撮れるようなところをバッサリ切って別の時間に映る。このドライさが主題の恐ろしさと映画としてのサスペンスを両立させている。素晴らしかった。
朝田

朝田