予告編は感動系ヒューマンドラマのような仕立てになっているが、これは完全にミスリード
認知症の厳しい現実を突きつけられる壮絶な映画
認知症に関わる人たちの苦しさは聞いたことがあったが
当事者の苦しさをこんなにも突きつけられることに成功した作品は初めてではないか
その意味においてとても価値ある映画だと思う
6歳と3歳の子供がいる親として
子育てを通して「命に向き合う」ことはしてきたし
それをする前と後で全く見える景色が変わったくらいに人の命について考えるようになった
しかし「命の終焉に向き合う」ということは、まだ経験を通してしたことがない
「なぜ人は老いと共に認知症という現象を与えられるのか」
科学的な文脈ではある程度わかっているのだろうが
国語的な文脈においてこの問いに向き合うことが監督からのメッセージと受け取った
登場人物も非常に限られていて、
主演のアンソニーホプキンスはもちろん、
誰もが素晴らしい演技だった
これは納得のアカデミー賞
余談
以前、介護の仕事をしている友達がこんなことを言っていた
「認知症が進んでいく人を見ると、人はどんどん余計なモノが削ぎ落とされて、その人が生きてきた本質が炙り出されていくように感じる。ずっと笑顔でニコニコしている人もいれば、一方でずっと癇癪を起こしている人もいる。最後の最後、理性がなくなった時に、その人の人生が炙り出される」
最後のシーンでこのセリフを思い出し、余計に胸が苦しくなってしまった