アギゴン

ファーザーのアギゴンのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.5
アンソニーは1人ロンドンで暮らしていた。彼は徐々に記憶が薄らいでいて
日常生活を送るには助けが必要と感じた娘のアンはヘルパーを雇う。しかし元々プライドの高い父は他人の世話など必要無いと頑なになり、何人ものヘルパーを拒みアンを悩ませていた。
ある日アンは、ロンドンを離れ、愛する人と共にパリへ移り住む事をアンソニーに告げる。娘からの告白に「1人でも心配ない」と笑ってみせるもアンソニーの中で隠しきれない動揺が走る。その日をきっかけにアンソニーの心が少しづつ崩れて行く…

この作品を観て、私にはとても身近な現実問題として受け止められる作品でした。
アンソニーが現実と妄想が入り交じった世界で何とか普通を保とうと必死になる姿が見ていて苦しかったです。
娘のアンも父親から、嫌がられながらも父の為に全力を尽くして父をサポートしようとする姿にもかなり感情移入してしまいました。
普通に彼の行動を第三者的に見てしまうと、理解出来ない部分もあるのかもしれませんが、認知症になってしまった本人側が見えてる風景や、物に執着する傾向からか
人を疑ってかかる心情などが描かれていて、私は素直に「認知症」になってしまったらあの様に感じてしまうんだなと思いました。
アンソニーは時計に執着があったのか…
いつも誰かに取られたと勘違いし、娘が同じ場所で時計を見つけます😞
そんな場面は、私の日常生活でもちょくちょく起きることで、まだ人を疑いはしなくとも、父の入れ歯を茶箪笥や玄関に置いてあるの見るとため息か出ます。
私は口煩いし、アンのように健気にサポートは出来てなくとも、あまり面倒も見に来ない兄よりは頼られていると思っていますが、年老いた親達にとっては、たま〜〜〜〜に来てちょっと美味しい物を置いていくだけの兄に感謝する姿を見ると、あたしはなんなんだろ〜って思う時があります。毎日世話をする娘より、好物を持ってくる兄がヒーローになるとは😞
劇中でもアンソニーがもう1人の娘のルーシーの(アンの妹)事ばかり気にかけ、アンと比べたりする場面では、きっとアンも私と同じ思いをしていたのかなと見てて辛かったです。ちょっと泣けました。

アンソニーがどんどん壊れていく様子がとてもリアルで、語弊があるかもしれませんが、今の私には良い参考書の様に思えました。
やがて人は一番安らぎを感じた場所に帰って行くのでしょうか。幼子のように泣きじゃくるアンソニーに、泣けて来ました。


サイコパスなイメージが強い、あのアンソニー・ホプキンスが、等身大で人生の黄昏時を見事に演じきっていて、とても感動しました。
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