ミヤザキタケル

ファーザーのミヤザキタケルのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.1
自分を認識して貰えなくなることの悲しみ、支え続けていくことの苦痛や苦悩、当たり前だと思っていた日常が失われていくことなど、いずれ訪れるかもしれない現実を、人によっては既に体験済みの現実を目の当たりにし、心動かされる。そんな認知症を発端とする家族のドラマを描いた作品はたくさんある。

ただ、この作品の場合、“支える”側だけではなく、“支えられる”側の心に生じているであろう困惑や葛藤にも寄り添わせてくれる。実際になってみなければ分からないし、なってしまえばもうそれどころではないと思うのだが、認知症の当事者の心模様を垣間見させてくれることだけは間違いない。そこにこそ、本作における唯一無二の価値が宿っていたように思う。