ちびた

ファーザーのちびたのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0
5人に1人が認知症になる時代
明日は我が身。
他人事ではなく自分が数十年後に認知症になるかもしれないと思うと苦しくなる。

認知症
アルツハイマー型(脳に異常なタンパク質がたまって起こる)
レビー小体型(幻視、幻聴が特徴)
脳出血や脳梗塞など脳血管障害による認知症など種類は様々。

中核症状・周辺症状に分かれる
中核症状→脳の機能が低下して起こる症状
・時間や場所、人がわからない(見当識障害)
・今まで普通に出来ていた事が出来なくなる。(失行、失認、失語、遂行機能障害)
・記憶がごっそり抜け落ちる。(記憶障害)
など

周辺症状→中核症状に対しての行動や心理症状
・暴言、暴力 ・介護の拒否 ・物盗られ妄想 ・徘徊 など

周辺症状は問題行動だけど、本人にとっては中核症状に対して何とか適応しようと努力した結果の行動。

認知症患者は基本、病識の欠如がある(自分が認知症だという自覚がない。でも何かがおかしいとは思っている)


ある日から奇妙に世界が変わっていく(中核症状の出現、認知症の発症)
・知らない男が急に自分の部屋に入ってくる。娘の夫だと言うがはじめて会う。(対人の見当識障害)
・人が時々違う(対人の見当識障害)
・朝の8時だと思ってたら夜の8時だった(時間の見当識障害)
・次女が死んでいる事を忘れている(記憶障害)
・時系列がバラバラ(記憶障害)
・服の着方がわからない(失行)

それに対する不安、焦り、怒りの感情。自分がおかしいのか?いや認めたくない。でも何かがおかしい。奇妙な周囲に必死に適応しようとアンソニーなりにもがきまくる(周辺症状の出現)

・時計をバスタブの下に置く→置いた事を忘れる→つけてたはずの時計がない→娘が自分が忘れていると言っているがそんなはずない。記憶障害を認めたくない。なんとか辻褄を合わせようとする→結論→介護人が盗んだに違いない(物盗られ妄想)

・認知症により実際は1人で生活ができなくなっているが自覚がないので自分はきちんとできていると思っている→娘が介護人を雇う→自尊心を傷つけられる。怒り、戸惑い、イライラなど負の感情→介護拒否、暴力、暴言

・認知症の影響で訳のわからない事をする→周囲はどう対応してよいかわからない、本人は傷つけたくない→無意識に腫れ物に触るような態度をとる。本人の知らない所でコソコソ話す。→「何か悪口を言われている」「自分を嫌っている」と思い込んでしまう→アンや介護人、義息子に対する暴言

中核症状の進行は止める事はできないが、周辺症状は対応次第で軽減させたり消失させる事はできる。


母を求めて泣いたり叫んだりするのは万国共通で認知症あるある。特に男性は本当に多い

なんとか取り繕い、必死で体裁を保とうともがくアンソニーも徐々に症状が悪化するにつれて身なりもパジャマ姿が多くなり、シャンとしていた背筋も丸まって最後は赤ちゃん帰りしていた。

「全ての葉を失っていくようだ。」
この言葉に認知症患者の本音を見た気がする。
アンソニーにとっての葉とは…記憶?思い出?言葉?
葉が失われていくと言って泣きじゃくるアンソニー。でも少し視点を変えるとそこには娘達と撮った思い出の写真が。窓の外には青々と生い茂った木々。アンソニーが歩んできた人生は失われずそこにしっかりと在る事を表現しているようで救われた。

今回の映画の教訓
*認知症になって周りに迷惑をかけないように普段から健康に気をつける
*認知症患者さんやその家族には優しくする
*もしなった時の対応を健康な時に家族と話し合っておく
ちびた

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