まりも

ファーザーのまりものレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.3
観てからひと月経ちましたが、なかなか言葉がまとまらない映画でした。

認知症を持つ本人が見ている世界を体感できるよう作られた映画は、今まで観た映画の中では初めてです。少しでも認知症に関わる人には観てほしい。

覚えられない人に思い出させようとする事がどんなに酷か、何気ない言葉であっても、こちらから観た真実を突きつけられ、その気持ちをうまく伝えられない混乱や孤独が改めて感じられました。

ただ、やはりこの映画も認知症の人を自分を失っていく可哀想な人としてしまっている気がしました。観て、認知症に強く恐怖を持ってしまう人もいるかもしれない。映画のアンソニー・ホプキンスは笑わない。もっとアンソニー・ホプキンスは笑えるはずだし、一緒に笑いたい。

短めの映画ですし、そこからどうしたらその人の核を大事にできるのかまでを描くのは難しそう。本人の世界を知ってもらう趣旨もボヤけますし、考え方は色々ですし。

寿命が伸びた今、認知症はどんどん増えていくのだと思います。なんだかそれは、やたら無くそうとしたりその人の病気としてだけで見るのでは追いつかない、自分は人間の自然の摂理のような気がしてしょうがないです。

自分もなるかもしれない。なったらどうしよう、と、いたずらに恐れるのではなく、今生きている人はみんな毎日死ぬまでの時間を生きているわけですから、自分が何が大事なのかを大事にしたいと思っちゃう。
わたしは死ぬまで地味に美味しいものを食べて、地味に楽しいなと笑ったり泣いたり時にはちゃんと怒ったりして、少数の大事な人と生きていきたいと思う。映画はずっと観たい。全部叶うかはわからないけれど、自分で決めることが難しくなったらそれを理解しようとしてくれる人に託したい。
なんか当たり前に真面目な感想になってしまいました。わからないけど今はそう思う。
まりも

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