APACHE

ファーザーのAPACHEのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.2
【ファーザー】感想

Netflixで観賞🎞

名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。【羊たちの沈黙】以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。

ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。

アンソニー・ホプキンスが出ずっぱりの舞台を見ているかのよう。
出演者たちが画面から消え、次に現れた時は違う人になっている...。認知症側の主観で見た世界が映画として斬新すぎた。

認知症の父は、正しく世界を認知できなくなっていて、観ていて不安になるのは、自分が認知している世界は人の認知と本当に同じものかどうかを揺さぶられる所。自分の世界は自分にしかわからない。多分、人も同じように見えているだろうと思ってはいるけど、この映画を見ていると不確で不安になる。

老いの話ではあるけど、それ以上に人間の知覚と記憶という、不確かで個人の不安を描いた物語だ。人の知覚レベルでは、絶対に正しいことも、絶対に確かなものもない。

流れる音楽がオーディオと連動していて、ヘッドフォンを外したり、スイッチを切ると止まるのが唯一自分でコントロールできることだったのかと思った。
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