さうすぽー

ファーザーのさうすぽーのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.4
自己満足点 86点

描き方が素晴らしいです。
けど、胸が痛すぎる(´;д;`)


認知症を患った父と娘の絆や交流を、認知症の父の視点で描いたヒューマンドラマ映画。
名俳優のアンソニー・ホプキンスが認知症を患った父を演じてましたが、認知症の症状を実際患っている父の視点で描かれるのが斬新でした。

"現実と幻想"を時に時系列をシャッフルして描いたミステリー小説のような手法で認知症の症状を描いています。それによって、現実と妄想が混同してわけがわからなくなってしまう認知症の症状を観る我々が追体験させられます。
それが本当に斬新であり、認知症を扱った映画にありそうで無かった描き方でした。

それと同時に、ものすごく怖かったです。
記憶が徐々に薄れ、何が現実で妄想かが解らなくなり、出来ていた動作が出来なくなり、おまけに人が誰かもわからなくなってしまう。やはり怖いです!
今まではそれが「怖い」と解っていても想像することはあまり出来なかったけど、それが今回疑似体験することで本当に怖さを少しでも知ることが出来ました。


また、アンソニー・ホプキンスの認知症の演技があまりにもリアルです。苦しいくらいに。
彼は数々の名作映画で素晴らしい演技をしてきてますが、リアルな演技をするのはどんな素晴らしい俳優でも至難の業です。
しかし、彼のインタビューを観て一気に附に落ちました!
自身の父親も、晩年に認知症の傾向があったようです。そんな父を間近に見ていたことで認知症の様子を想像することが出来たみたいで、実際本人は「演じるのは簡単だった」と言っていました。
彼の想像力と今まで培ってきた演技力が功を奏したのかもしれません。
彼のあまりにも"リアル過ぎる演技"によって、観ていて可哀想に感じたし胸が痛かったです。

ちなみに、場所がほぼ家のみだったり家の撮り方が固定カメラにしたりと映像面でも評価したいところですが、やはりアンソニー・ホプキンスと脚本力には敵わないなと思います。


欠点が全然見つからないほぼ完璧な映画ではありますが、内容の重々しさやもの悲しさから観てるのが辛い事が多かったので、観た後の感覚として90点を下回りました。

しかし、認知症の恐ろしさ等を知りたい方は一度は観るべき映画だと思います。
オススメです!