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ファーザーのhikumahikaのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0


【メモリーサスペンス】

作品全体を通して、認知症の人の世界を体験することができる。
理解できない状況にアンソニーが呈したのは「困惑」の連続。
この状況がどれだけ当人に不安をもたらすものか、わかる。

そういった人に絶対やってはいけないのは、周囲がその人の記憶を確認すること。
「昨日会ったでしょ?」「もう忘れたの?」
何度となくアンソニーの周囲が彼に発していたこれらの言葉は認知症の人には禁句。
そのたびに彼の困惑が増幅されていくのがわかる。

そして、自認する年齢について加齢が止まり逆に若返っていくのも認知症でよくあること。
アンソニーも老齢でありながら母親を求め、介護士の胸で初めて心の安定を得るのであった。

この点も含めて、父娘の演技力も相まって素晴らしい作品になった。
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