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プロジェクトVのdm10foreverのレビュー・感想・評価

プロジェクトV(2020年製作の映画)
3.4
【思い出は重いでぇ】

「プロジェクト○○」と言いながらも、あの「レジェンド作品」とは全く関係ない作品。
それはスティーブン・セガールの「沈黙のなんちゃら」と同じような便利グッズ扱いなんだろうか・・・。

とは言え、一応物語の構成というか設計図はふんわり似ています。

~暗躍する悪党がいる。ジャッキーは正義の組織に属していて、当然、悪いやつを見逃すわけもなく、敵のアジトまで乗り込んで行って好き放題暴れる。そんでもって悪者を退治する。終劇~って感じ。

でもね、それは別に悪くない。
だってずっとそれが好きだったんだもん。
ジャッキー映画に「メンタル崩壊トラウマストーリー」なんて求めてないし、「人体損壊グロ×ゲロ×エロ映像」も求めていない。
あくまでも欲しいのは「いつ飲んでも同じ味で安定してるコカ・コーラのような爽快感」。
だから、事あるごとにジャッキー映画を観ちゃうっていうところはある(あった)。

たしかにジャッキー映画でも、特に最近のなんかは暗い話だったり、救いがないものもなくはない。
でも、やっぱり「頑張るジャッキー」が画面に映っているだけで、どことなく安心感を感じるんだよね、不思議と。


っていうところでの今作。

やっぱり大前提として「違う」。
それは「過去作」との比較というよりは、「自分が今までジャッキーに求めたもの」との比較。

手っ取り早い比較なら、やっぱり「プロジェクトA」に代表されるこの頃のジャッキー映画。

やっぱり「ゴールデン・ハーベスト(香港)」が製作していた意味はとても大きかったと思う。
それは作品の色合いにも現れていたけど、どの作品にも「野心」があったように感じる。
勿論、当時のゴールデン・ハーベストは既に一定の評価を得ていたんだけど、そういう事ではなく、「香港から世界へ」っていう気概がとても強くて、どの作品にもそれがビンビンに溢れていた。

そりゃ、ハリウッドやボリウッドに比べたら、撮影にかけられる資金の桁は違ったのかもしれない。
でも、そこに圧倒的な熱と愛情があったんですね。
それは「香港映画」としての気概といってもいいかもしれない。

(これは、絶対に俺らじゃなきゃ撮れないだろ!)っていう。

そうやってCGや特撮なんか使わなくても何十年も楽しめる作品を何本も作ってくれた。

ゴールデン・ハーベスト製作の作品の最初に流れるテロップはホントに好き。
≪♪デン!デン!デン!デン!テ~テ~テ~テ~~~♪≫
効果音に合わせて、真っ赤な長方形が一つずつ現れる映像。
そしてそれが4つ組み合わさって金色に輝きながら『GOLDEN HARVEST』の会社名が出るだけで、もの凄い胸が高鳴ったもんだよ。

今、こんなことある?
まだ映画も始まってないのに、制作会社の名前を見ただけで興奮するって?

・・・だからね。
中国資本で作られた本作。
確かにスケールは凄い。ロケ地もハリウッド並み。
ちょっとしたシーンにも「もの凄いお金がかかってんだろうな・・・」って一瞬でわかる。
でも、そこには熱も愛もあまり感じない。
普通に「娯楽映画です」って言う感じ。

ジャッキーが歳を取ってしまって、所狭しと暴れまわるシーンが少ないとかそういうことじゃない。
この作品には「あの頃」の情熱と愛が決定的に欠けているのだ。

「ジャッキー・チェンが出てます。お金も十二分に使います。『だから面白いでしょ』」

って言われているような感じがしてちょっとだけ萎えた。
あ~やっぱり中国の成金が映画に手を出すとこうなるんだな・・・って。

この作品に出て来る役者、ジャッキー以外覚えられます?
かわいい子やイケメンなどなど、たくさん出てましたけど、パッと顔浮かびます?

それに比べて昔の作品なら今でも「マギー・チャン」なんか直ぐに顔が出てくるし、「大口(おおぐち)」とか「ひょうきん」とか「チー総監」とか芸名を覚えてなくても役名だけで顔まで浮かんでくるくらいに印象深いキャラがたくさんいた。
何なら吹替えの石丸博也さんの声と共に台詞まで覚えているシーンもたくさんある。
それだけ、観ている側も愛着を持って観ていた。
ずっとジャッキー映画を観てきたけど、いつの間にかそういう「思いいれ」や「愛着」が薄れていった。

だからね。
「ジャッキー、年取ったなぁ~」「(ジャッキーの)アクションシーンが年々減ってきたな~」っていう感想以上に「あの頃のジャッキー映画からは随分と離れてきたんだな・・・」っていう感傷的な気分になってしまう。

中盤の「ブラックホークダウン」のような市街戦シーンや、「コンフィデンスマン」のようなガジェットを使ってターゲットに近づいていくところなんかは単純に面白いとは思ったよ。
既視感云々はさておきね。

でも、やっぱり印象に残らない。
(何回でも観たい!)と思えないんです。

初見で「まあまあ面白かったわ~」っていう感想の作品でも、その後ジワジワ込み上げてきて、後からもう一度観たら「何じゃこりゃ!そういうことだったのか!?」と、その面白さに改めて気がつくなんてものもあるけど、本作に関しては(恐らく・・だけど)2回目見ても特別な発見とかはない類の作品。
そもそも1回目の時点で疑問も謎も伏線も感じてはいないし・・・。

もう「ジャッキー・チェン」という稀代のアクションスターと「ゴールデン・ハーベスト」のような情熱も持った開拓者がタッグを組むなんてことはないだんろうな・・・。
っていうか、ゴールデン・ハーベストは既に破産してるか・・・。
・・・まぁひとつの時代が終わっていく道程と併走しているようなものなのかもしれない。
後輩たちが育っているみたいなことも言ってたし・・・。

最近はジャッキーの新作映画を観るたびに、結局その後で「プロジェクトA」のDVDを観てお口直しをするのがルーティンになってます。
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