のん

キネマの神様ののんのレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.6
原作と目線が真逆

原田マハ先生の原作がオールタイムベスト級に好きな私としては、この映画は原作のタイトルと登場人物だけを借りた全く別の作品としか思えなかった。


原作にはない50年前の撮影所のエピソードは、おそらくは山田洋次監督の自伝的な要素が入っていて、監督の視点から松竹映画の栄光の時代を顧みているようにも思えた。


原作と映画の決定的な違いは神様の「目線」だろうと思う。原作のゴウは「映画好きの観客」だから神様は常にスクリーン(というか空間そのもの)にいる。対してこの映画は完全に映画の作り手の視点に立脚していて、「神様は撮影所にいる」といわんばかりに主張している。

山田洋次監督にとっては神様はそこにいるのだろうが、原作の目線とは完全に真逆になっていて、いかに「原作と映画は別物」と割り切りたい私でも、この内容ならあえてこの原作でやる必要があるのかと強く憤りを感じた。
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