北朝鮮の最高指導者、金正恩（キム・ジョンオン）の異母兄である金正男（キム・ジョンナム）がマレーシアのクアラルンプール国際空港出発ロビーで暗殺されたのは2017年2月17日であった。本作は監視カメラに収められた金正男殺害の一部始終と、実行犯として逮捕された20代半ばのインドネシア人とベトナム人の女性2人の証言、彼女らの弁護団、ジャーナリストへのインタビューなどで構成。彼女らの背後で暗躍していた北朝鮮工作員の暗殺計画、そして彼女らを暗殺の実行犯に仕立て上げ、犯行に及ぶまでを克明に炙り出したドキュメンタリーである。
逮捕され、2年の裁判と拘留。ある日突然ドアンが釈放され、後にシティも釈放される（国家間の密約があったのだ）。それぞれの故郷に帰った二人は、メディアやＳＮＳで容赦ないバッシングを受け、かつての平穏な日常は失われてしまう。二人の若い女性の、決して恵まれているとは言えない暮らしと夢を工作員に利用され、平穏な暮らしも夢も搾取され、打ち砕かれてしまったのだ。
拉致被害者の方々も北朝鮮に平穏な暮らしも夢も奪われ、苦しみを抱えて生きておられるのだろう。そう思うと暗澹たる気持ちで胸が苦しくなるのだ。
