アニマル泉

チィファの手紙のアニマル泉のレビュー・感想・評価

チィファの手紙(2018年製作の映画)
5.0
岩井俊二の透明感溢れるリリカルな傑作。「ラストレター」より先に撮られている。ジョウ・シュンと二人の少女チャン・ツィフォーとダン・アンシーが圧巻の素晴らしさだ。ジョウのセリフの音量の繊細さが素晴らしい。少女たちの瑞々しさは岩井の十八番だが本作では極まった美しさだ。大連の風景も見事で岩井の編集のリズムも短く畳みかけてくる。いつもの前半のまどろこしさが無い。階段が印象的だ。二人の少女が駆け下りて去っていく中学校の表の階段、回想のチィナンの原稿を直すイン・チャンの二人の校舎の階段、そしてチェンチェンをチィファとジョウ(ドゥー・ジアン)が追う夜の階段。岩井はロングショットが素晴らしい。カットのリズムが早いのでいつも以上にロングショットが鮮やかだ。ラストカットの教室の二人のロングショットも瑞々しい。扉の開閉がアクセントになっている。バタンと閉まってロングになる鮮やかさが要所にある。チャンチャンが犬と自宅に戻ってくるのを待ち受ける室内からのドア越しのロングショットも忘れ難い。SEがスッと消えて無音にする、劇伴奏がポーンと入る、というところや、さり気ないスローモーションなど、岩井ワールドの真骨頂が堪能できる。
先に見た「ラストレター」への不満が全て解消されている。というか先に撮られた本作が圧倒的に傑作である。潔くて、作家性の純度が高い。やはりセルフカバーは難しいのだろうか?
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