Aya

コレクティブ 国家の嘘のAyaのレビュー・感想・評価

コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)
3.6
#twcn

私の知ってるルーマニア人はセバスチャン・スタンとエヴァ・イオネスコ。

医療人の端くれとしていろいろ考えましたね。

てか火事のシーンめっちゃ怖かった。
ひん剥いた目ん玉が瞼に隠れるまでめちゃくちゃ時間と力が必要だった。

ルーマニア語&英語って書いてあったけど私がわかった英語は"Don't give a fu○k!!"(知るかクソが!)だけでしたw

この映画はルーマニアの医療と政治の汚職関係を軸に地元メディアと志ある1人の大臣を追ったドキュメンタリーです。

きっかけはライブハウス「コレクティブ」で起きた火災事故。
この事故で27人が亡くなった。
そして事故から生還し怪我の治療にあたっていた被害者がさらに37人亡くなった。

???

本来であれば治療を施され回復へ向かうはずの被害者がなぜ当日の火災以上に病院で亡くなったのか?

被害者の身体からは細菌やウィルスが検出され収容された病院にて院内感染が発覚。
火傷はその跡に細菌が繁殖しやすく、感染症の可能性は十分あり得る。

しかし亡くなった被害者の数が異常だ。

調べてみるとある製薬会社の消毒液が10倍に薄められていることが発覚。
え、それもう飲めるんじゃ…。

政府によりその消毒液がルーマニア全土に供給されほとんどの病院、オペ室や感染病棟などで使用されている。

なぜ?

どうやら病院の院長(Dr,が多いよね)と理事長(Ns.が多いよね)が医療分野に投入された予算を横領していた。
それも相当額。

しかし自分は医療精度の高いスイスへ治療に行く。
スイスは尊厳死あるからね。

病院、政治家との金を介した汚職を暴いた地元スポーツ誌は英雄視され大臣を辞職に追い込むまでに。

新しく就任した大臣は元Dr.の若き政治家。
地元誌のジャーナリストや、メディアに集まってくる告発者の、そして「コレクティブ火災事件」の被害者の声を聞く。

志を持ち、医療の本来の役割である「人を救う」ために汚職や認可の不確かな医療機関へ切り込みをいれようとするが、Dr.や告発者、政治家や認可局etc...様々な人から汚職の証言を得るもののいざ表沙汰にし、システムに切り込みをいれようとすると、さっき言ってたことをひっくり返され協力が得られない。

市長には断罪され近しい仲間や正しい人の証言はあるものの、みなリスクを鑑み正式な場所での公表は拒まれる。
おまけにメディアの記者には諜報機関からの脅しまでくる始末。

メディアは市民の生活を守るために断罪するのも仕事のうち。

なんか途中で告発した人も「志とかじゃなくて自分のためでしょ」とか言われたり、医療人が声を上げないってすごく不思議なんです私。

私は医療事務なので保険診療の計算をしたり公費の請求をしたり病院としての施設基準の指標を作成したり、とかお金のことをだいたい考えてるんですねw

そんな私ですら、呼吸器科のない病院で肺移植はむりだろ〜とか(でも循環器のDr.いればなんとかなりそう)、消毒液の件とか熱傷の治療や感染対策とかそのくらいは私でもわかるぜ・・・恐ろしい!

患者の健康や怪我の治癒のために働くのは決して難しいことではないんです。
日本では…。

若くてハンサムな大臣は汚職を断ち切り正しい医療を市民に提供するのが仕事。
しかし近く選挙戦。

大臣本人はシニカルな人柄で任期は次の選挙戦までの6ヶ月だと思っている。
もちろん全力で仕事に取り組むが思った異常に根は深く、行われた政党選挙でも惨敗。

てか投票率低すぎじゃない?!20代で5%、30代で10%。
諦めが数字に現れる。
しかし勝った汚職政党公民に対しての減税と医療従事者に対しての税金全免除を掲げわかりやすく金で票を買う。

信じられない、といった家族やメディア。
大臣は予想はしていたが、自分のやったことは少しでも意味があったかな?と寂しそうな表情を見せる。

そしてラストは原点に立ち返り無音のEDにハッとする。

それにしてもルーマニア、女性の記者やジャーナリストが多いよね〜。

あの会議室の外に置く録音中のスマホは何のためあのかすごーく気になった。


日本語字幕:額賀 深雪
Aya

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