らくだ

スプリーのらくだのレビュー・感想・評価

スプリー(2020年製作の映画)
3.5
10年やって登録者1桁という超底辺YouTuberのカートは、ある日自分が働いているタクシーで「乗客を殺すところを配信したらバズるんじゃない?!」と思い立ち、それを実行に移してしまう。しかしせっかく殺したのに(?)登録者数は一切動かず、業を煮やしたカートはやがて矛先をインフルエンサーに向けていく…というインターネットに足を突っ込んでると背筋がツーッと寒くなるようなスリラーです。

作品の倫理観が(良い意味で)完全に狂っていて、本当にうすっぺらいノリで人間がぽこすかと死んでいくスリラーなのに、それをヘラヘラと実行するカートの醸す空気に現実感がないというか、どこか軽薄で無思慮、悪びれないのがサイコで怖いんですよね。それはこの配信を登録した視聴者たちも同様で、無責任に「もっところせー!」と煽り立てるだけ煽り立てて知らんぷりを決め込む…ある意味では匿名の観衆というのが一番の狂人かもしれないんですけど、ほんとそういうところネットってよくないと思う!わかってるんですか!気を付けます。

序盤の一切誰にも見向きしてもらえてないカートのチャンネルが本当に痛々しくて、なんで痛々しいのかな?って思ったんですけどこれ完全に自分にフィードバックされちゃうからですね…底辺、もしくはそういう時期をSNSで持ったことのある人(ぼくですね)はみんな実感してしまうことじゃないかなって思います。それで一発逆転の大それたアイデアを思いついちゃったら、まぁ…気持ちは分からなくもないですが…やりませんよ

SNS、動画配信がキーとなる作品というのもあって、設置されたカメラが同時起動して一度に2窓3窓、かつガンガン流れる動画コメント付きで進んでいくけっこう新鮮な画面作りが、この作品の空気感と合致してて、ちょっと目は忙しいけど楽しくてよかったです。
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