MasaichiYaguchi

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だったのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
「ザ・バンド」のメンバーであるロビー・ロバートソンが2016年に発表した「ロビー・ロバートソン自伝 ザ・バンドの青春」を基にしたこのドキュメンタリーでは、バンドの誕生、ウッドストックにある住居「ビッグ・ピンク」でのレコーディング、そして伝説的解散ライブ「ラスト・ワルツ」に至るまでの、多くのミュージシャンに影響を与えたバンドの足跡を辿っていく。
「ザ・バンド」がボブ・ディランのバックバンドだったことは勿論知っていたが、それ以前の経歴は本作で初めて知り得たのだが、そのロニー・ホーキンスのバックバンド時代が、彼ら本来の音楽とは全く違うものだったので新鮮だった。
この作品を観ていると、ボブ・ディランに誘われてやって来たウッドストックの「ビッグ・ピンク」時代がバンドとして一番幸せだったのが伝わってくる。
その頃の彼らの関係は正に“兄弟”と言える固い絆で結ばれたものだったと思う。
だが、物事には必ず始めと終わりとがある。
彼らが有名になって売れるようになると、それによる重圧から逃れる為の酒やドラッグという悪魔的な誘惑が忍び寄る。
それによってバンドのメンバー間に溝が出来、隙間風が吹き始める。
このような「ザ・バンド」の歩みを自伝の著者であるロビー・ロバートソンが振り返る形で中心に、そして補足するようにブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトン、タジ・マハール、ボブ・ディラン等が彼らの魅力と共に語っていく。
本作の製作総指揮のマーティン・スコセッシも勿論登場する訳だが、特にこの監督が担当した「ラスト・ワルツ」の撮影秘話が興味深く、本作で断片的ではあるが、映し出されたライブは何度観ても胸が高鳴る。
この映画では、この「ラスト・ワルツ」で「ザ・バンド」が終焉したかの如く描かれるが、実際は1983年にロビー・ロバートソン抜きの4人で再結成されて初来日公演もしているし、再編後に3枚のアルバムも発表している。
1999年にメンバーのリック・ダンコの死去をもって活動停止というのが正しいと思う。
本作を鑑賞後は改めて「ラスト・ワルツ」を観直したくなります。