TAK44マグナム

ジョーズ キング・オブ・モンスターズ/ナイトメア・シャークのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

2.5
悪夢はサメない!


「ゴーストシャーク」「フライングジョーズ」「シャークショック」の監督、「シン・ジョーズ」では脚本を担当したB級サメ映画の第一人者であるグリフ・ファーストが満を辞して放つ、オールスターキャストB級サメ映画!
オールスターといっても、当然のことながらブラッド・ピットやマーゴット・ロビーが出ているわけじゃありません。
なんと!
「シャークショック」及び「シン・ジョーズ」で生き残った主人公たちが再び集結しているのです!
世間的には誰にも知られていないのは百も承知!
でも良いのです!
なにしろこれを書いてる筆者はグリフ・ファーストのサメ映画を何故か制覇してきてしまったので、本作も観ないわけにはいかないのです!
謎の使命感!
ちなみに、「シン・ジョーズ」の時はドローンで遊んでばかりいたキャプラン役のボビー・カンポは「ファイナルデッドサーキット3D」の主演までこなした俳優さん。
え、知らない?


グリフ・ファーストが手掛ける映画のサメは、たんに巨大だとか、メチャ凶暴だとか、それだけにとどまらないのが特徴なんですよね。
みんな、何かしらの特殊なスキルを備えているのです。
「フライングジョーズ」は肌が硬くて淡水でも生きられるサメ。
「ゴーストシャーク」は水があれば何処へでも出現できる幽霊サメ。
「シン・ジョーズ」は放射能を撒き散らす被爆サメ。
「シャークショック」は高圧電流でビリビリさせられる電気サメ。
・・・では、本作のサメが持つ特殊能力とは一体何か?
それは、夢の中に現れて襲ってくる!という、「エルム街の悪夢」をまるまるパクった、まるでフレディ・クルーガーのようなサメなのです!
つまり、過去にサメに襲われ、極限状態を体験した者たちがサメに襲われる悪夢を毎夜みるので治したい!というのがメインストーリーとなります。
なんじゃそりゃ!

悪夢の演出も「エルム街の悪夢」を踏襲していて、雰囲気なんてそのまんま。
やたらと背びれがドーン!と突きでますよ。
地面から!床から!
風呂に入れば定番の、女子の股の間からニョキッと出てくるヤツを期待通りに見せてくれます!
しまいには、砂漠に巨大な背びれが何本も迫り上がる始末!
なんなの、この無駄な迫力は(苦笑)
総じて、悪夢の場面は稚拙なCGながらも楽しく観られました。
特に冒頭はワクワクさせられましたよ。しかし、期待させるにじゅうぶんな不気味さを醸し出していただけに、グダグタな物語や突拍子もない終盤がアホ臭くて残念。
何よりもサメ映画なのに「サメに食いちぎられる」に代表される残酷さが物足りないので、怖くもなんともないのは致命的だと思います。
格好良かったり、笑えたりする部分もいくつか散見されるだけに勿体ない。
「ゴーストシャーク」や「シャークショック」はもう少し切れ味のあるゴア描写もあったし、「シン・ジョーズ」の不謹慎な笑いの取り方も賛否はあれど面白かったのにそれも無い。
サメの見どころが背びれ以外に全然ないのです。
というか、サメの出番が少なくて、もはやサメである必要がまったく感じられないのはサメ映画として大問題でしょう。
サメよりも、それが分解して(?)細かい虫みたいになって飛び回るのがメインになっています。
なんだかハチとかハエの映画みたいですよ。
何故に「ゴーストシャーク」ばりに弾けることが出来なかったのか。
どうした、グリフ・ファースト?
サメ映画作るのに飽きてしまったのか?
これが彼のサメ映画の集大成なのだとしたら、ちょっと哀しいものがあります。

とは言え、やはり過去作の主人公たちが登場するのはアガりますね。
「シン・ジョーズ」と「シャークショック」を鑑賞済みなのが条件となりますけれど。
日本人からすると何を考えているんだと怒りさえおぼえても仕方がない「シン・ジョーズ」ですが、被爆した魚を食べたら何故か爆死するというヤバすぎるギャグを笑って観られるなら平気でしょう。
レイチェル・ブルック・スミスは全編、赤いビキニルックで出ずっ張りなのですが、本作でもオマージュなのかサービスのつもりなのか、赤ビキニを着用する場面が(無理やり)あったりします。
また、入浴、バスタオル姿、さらにはボビー・カンポとのベッドシーンまで披露する大盤振る舞いで、本作におけるセクシー要素を一手に引き受けております。
「シャークショック」は他愛のないサメ映画ではありますが、「シャークネード」シリーズで有名なタラ・リードがゲスト出演してチェーンソー振り回したり、サメの倒し方が斬新だったりと、それなりに見せ場もある作品。
サメの倒し方というと、本作の実体のないサメをどうやって倒すのかにひと工夫があるんですが、これがかなりとんでもない(苦笑)
まぁ、あくまでも悪夢の世界での話なので現実の物理が通用しないのも肯けるのですけれど、それにしてもバカ!
なんで「アレ」で引き寄せられるんだよ?と脳内がハテナマークで埋めつくされましたよ。

権利問題があるのかもしれませんが、上記2作品に全く言及されないのが非常に不満。
せめて台詞だけで良いから「サメがメルトダウンしそうで大変だった」とか、「サメを電流で焼き殺そうとしたらUSJの様には巧くいかなかった」などと語らせて欲しかったですね。
お互い過去の事件について話して、「そんなバカな!」とツッコミあったら面白かったのに。


オチも酷いですが、それにしても何も考えていないのが丸わかりな邦題はいくらなんでも救いようがない。
キングオブモンスターズって、他に怪物が出てこないから余計に恥ずかしい。
原題の「ナイトメアシャーク」のままでよかったのに。
格好いいし、内容とリンクしているし。
これだとまたタイトルやジャケット詐欺と言われて、不当な評価をされかねません。
内容も酷いから擁護のしようもないんですけれど、少なくともタイトルとかで損をするのは作品が可哀想。
ちゃんと内容で判断して評価してほしいものです。

「エルム街の悪夢」からアイデアをいただいたのは良いとして、そのアイデアを活かせていないのが宜しくないので、もう少し貧乏くさい部分を何とかして欲しかったですね。
テレビ映画だから限界があるのは分かっていますが、せめてグロい見せ場が一つで良いから欲しかった。
変にオシャレでクールなカラーにしようとして座りが悪くなってしまった典型的な失敗だと思います。
折角のオールスターなんだからもっとバカバカしく弾けても良かったのでは。
そもそもがバカバカしいんですから(苦笑)
ちょっとサメしい結果になってしまい、期待していたぶん切ないです(涙)

レンタルDVD(GEO)にて