イスケ

ビバリウムのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

鑑賞後の徒労感…
これを感じさせた時点で作り手の勝ちなんだろうな。。つまり一般労働者の徒労の映画なんですよね。

大きく見れば、アメリカを中心とした資本主義社会の縮図を描いていて、それを支えている核家族を様々な比喩的表現を用いて、より詳細に描いていました。不動産をテーマにしてるのは家というのが核家族の象徴だからなんでしょうね。

「核家族は失敗だったと」いう論調も多くなってきている中、監督の思想的にもきっとそこが一致してるんでしょう。

子マーティンはワーキャー喚くばかりで何も実行動を起こしません。その傍らでヘトヘトになりながら子育てをする母親役と、穴を掘り続ける父親役。結局、両親役は身を粉にして我が子ではなく「資本家」のために働いているんです。
これが紛れもない社会の構造だという強烈なメッセージなのだと思いました。

カッコウの意味が初めは分からなかったのですが、生態を調べてみると冒頭の雛が雛を突き落とすシーンの意味がとても良く分かります。


いやー、それにしても、こういう「現実感からかけ離れている」物語の構成でメッセージを伝える作品は、短編でやるなら分かるけど、90分以上の作品に仕上げたのが驚きですw

ポン・ジュノ監督も参加している短編集の「TOKYO」などは非常に強烈な映画が3本並んでいましたが、メッセージ性の観点では近いものを感じましたし、あれが好きならこれも好きかも。

僕は「TOKYO」はハマらなかったんですが、今作はアリ・アスター系の不気味ポップな映像美を楽しめたこともプラスに働いたのかもしれません。作品の緻密さも自分としてはこちらに軍配です。

長編にしたことによって、徒労感を伝えきることができたのは大きいですよね。
イスケ

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