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ビバリウムのSSDDのレビュー・感想・評価

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.7
■概要
カップルが家を探しに不動産屋に訪れると、白いシャツに黒いネクタイとズボンに横分けの色白い長身の男から郊外の街を勧められ、車でヨンダーという街に向かう。
街は整然とレゴで並べたように緑色の一軒家が並び、男の不自然な会話や態度から男性は見学を嫌がったが家の内見も渋々と行う。
その中で部屋ごとに少しの違和感を感じるが、はっきりとはしない嫌な感覚を覚える二人。気づけば不動産屋はいなくなっていた。二人は街から出ようと車を走らせるがどうやっても案内された9の住宅にたどり着いてしまう…。


■感想(ネタバレなし)
不条理極まりない作品でかなり異質。
明確な脅威や悪意が表面的にはないのに、不気味さを感じる。キューブリック作のシャイニングのあのホテルの廊下のように完全なシンメトリーを見ると人は不安になるという生理的嫌悪感の感覚に近い。
あれを取り入れたキューブリックは天才ですね。

完全にシンプルな作りのためこれ以上書くとネタバレになるので控えますが、こんな目眩がしそうな生活はすぐに精神に変調をきたしてやがて胃や内臓の機能低下を招くだろうなとふつふつと恐怖を感じます。

退屈な作品といえばそうかもしれませんが、運命のボタン(2009)が嫌いではない人は観ても良いかと。
ちなみに運命のボタンは低評価ですが、私は好きです。

人によっては退屈な作品なので、観ないでもいいと思った方にネタバレは細かく書いておくことにします。








■感想(ネタバレあり)
・序盤
二人が感じた家の違和感は、衣服も二人用のものが揃っていて、まるですぐ住める状態にあったり、男の子用の部屋も用意されていて子供用のベットやものが揃っていて不気味さを感じたのでした。

しかし出たいと思った時にはもう遅く、街に閉じ込められます。

街から出られない代わりに家の前にはいつもいつの間にかダンボールが置かれて食には困らず、ライフラインも生きています。

二日目にして段ボールを開けると赤子が入っていました。
閉じ込められて98日後、子供は6才程度になっていて成長は人の20倍程度ということから男は人ではない何かと不気味がっています。

この子供が与える不快感が凄まじく、観る人までおかしくさせるほどの不快指数です。

子供が言葉を覚えるのは真似ることから始まり、なんでも相手の言うことをオウム返しにするのを喜ぶ時期がありますが、子供は大人と違って飽きや慣れが少ないので何度も繰り返すため辟易してしまいます。

それを日常で繰り返し、小馬鹿にするように思え、ご飯などを食べたい時は出てくるまで金切声を上げ続けるなど異常です。

やがて男は子供を閉じ込めて殺すことさえ厭わないと言いますが女性が助けて育て続けます。

・中盤
ある時子供がどこからか持ってきた本には人語ではない何かと、謎の模様(テレビを付けると同じような模様が動いていて子供がよく見ている)と人なのだが、喉元に蛙のように膨らんだ機構を持った人が描かれていた。

誰か会ったのか聞くと会ったが言えないと子供は言う、人真似が好きなので今日会った人の真似をしろと言うと奇声を上げ始め、喉元の横がふたつ蛙のように膨れ上がり、赤みを帯びた状態で人には発することのできない奇声を上げた。女性はそれ以来子供を人ではないと恐れ始める…。

しばらくすると子供から青年に成長して不動産屋と同じような容姿になり完全に恐怖の対象となった。

男は脱出のために穴を掘り続けていたが病にかかり死んでしまい、人外の青年に自分の掘った穴に捨てられる。

・ラスト
翌日ふいをついた女性はつるはしで青年に襲いかかると命の危険を感じた青年は四つ足歩行になり、道路をめくって地下に逃げた。

道路はまるでゴムのように柔らかくなっていて女性も滑り込むが、地下はまた街が広がり、違う人々が同じように生活をさせられていた。

結局元の街に戻ってきて絶命しかけている女性に青年は子供を育てるために存在するのだと、そして息を引き取ったのを見ると男性と同じ穴に死体を捨て埋めて車を走らせる。

着いた先は初めの不動産屋で、不動産屋の男は老いて死にかけていて、名札を青年に渡すと絶命する。

青年は名札を付けて、死体を死体袋に入れ畳んで棚にしまうと不動産屋になり代わり業務を始めるのであった…。


・考察
異星人の飼育場である街に人間は育てるために連れ去られ、観察されるが異星人もまた短命で命を繋ぐことをしているだけというなんとも不条理な話。

冒頭のカッコーのような鳥が自分よりも小さい鳥から餌をもらうというシーンからも、寄生して生きるこの異星人の象徴しているのでしょう。

人の不快になるところをうまく突いてくる言動を熟知してるかのような異星人の感じなどすごく良かったです。
淡々とした作品で、あまりメッセージ性も高くもないかなと思いますが割と好みの作品でした。

SFとしては地味なシチュエーションホラーですが、異質な感じがよかったです。まぁ人に擬態してる点はゼイリブなど色んなSFで描かれているのでよくある設定なんですけどね。
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