けーすけ

宇宙でいちばんあかるい屋根のけーすけのレビュー・感想・評価

3.9
中学3年のつばめは後悔をしていた。向かいに住む大学生の亨に好意を抱いており、彼の誕生日に夜にしたためた手紙をポストに投函したが、後になり恥ずかしさが込み上げてきたのであった。
つばめは通っている書道教室の屋上で、悶々としながらいつものように時間を潰していると、突如不思議な恰好の老女が現れた。なりゆきで老女にキックボードの乗り方を教えたつばめに対し、老女は「お礼に」と、つばめが投函した手紙をどこからともなく回収してきた。つばめは老女を「星ばあ」と呼び、仲を深めていくのであったが、果たして星ばあの正体とは・・・





劇場で観たかったけどタイミング合わずで観られなかった本作。レンタルにてようやく。
あの『新聞記者』の藤井道人監督作品で、時期的には『ヤクザと家族』の前に撮影してたのですかね。原作ありの映画とはいえ監督の振り幅が凄い。


内容としてはファンタジー、メルヘン的要素があり、好みは少し分かれそうかも。


つばめの目の前に現れた「星ばあ」。見た目の雰囲気も奇抜だし、言動もちょいちょい怪しい。でも話をしていくうちに二人は打ち解け、一緒に出かけたり、つばめに対して星ばあはアドバイスをしたりと仲良くなっていく。
このあたりの会話がなんとも自然体で心地よい。

星ばあが「行きたいところがある」と言い、つばめと連れ立った先はクラゲで有名な加茂水族館(山形県鶴岡市!)。そんな所へもバスで行けちゃうファンタジーさ溢れる描写もあります。


つばめの母親のお腹には赤ちゃんがおり、出産の時期も間近。中学3年生のつばめがいて、かなり年の離れた弟or妹ができる。
ここの設定が物語の一つ重要な部分となっており、思春期でもあるつばめの家族に対する想いや葛藤、そして成長していくさまが丁寧に描かれております。


家族との関係に悩むつばめに「夫婦だってもとは他人だ。一緒に暮らしていれば家族」語りかける星ばあ。そんな星ばあにも孫がおり、もう一度会いたいと心の奥では願っている。果たしてその願いは叶うのか。

つばめに関わる人物含め、各エピソードがどれも魅力的に切り取られておりました。



主演・つばめ役の清原果耶。本作でも圧倒的な存在感で魅力がビシバシと溢れまくる演技をしております。様々な感情をあらわす表情やセリフは圧巻の一言。エンディングではCoccoが制作した主題歌を歌っておりますが、歌声の透明感も凄すぎ…。天は二物も三物も与えるものなのですね~。

そしてもう一人の主役・星ばあは桃井かおりが演じておりますが、この人の自然体というか唯一無二感も面白い。長年のキャリアで培ってきた力で清原果耶の魅力をさらに引き出していたように思えます。水族館でのくだりはアドリブ全開なんじゃないか?って思わせられた。笑

つばめが思いを寄せる大学生の亨。伊藤健太郎が演じており、爽やか好青年。でもつばめからの好意には全然気が付かない鈍感さ。良いキャラだったゆえ、不祥事さえなければなあ…。



少女と謎の老女の出会いから始まる物語、僕はちょいちょい泣かされました。おすすめできます。


2021/03/22(月) TSUTAYA DISCAS定額レンタルにて鑑賞。
[2021-029]
けーすけ

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