しろくま

宇宙でいちばんあかるい屋根のしろくまのレビュー・感想・評価

3.7
2022.10.20/229/図書館DVD
〝ちょっとあんた何やってんだ。人の物に勝手に触って手癖の悪い女だねえ〟〝すみません〟〝愛想笑いかい?若いうちからそんなもの身につけて、しょうがねえなあ〟

書道教室のビルの屋上で見つけたキックボード。ちょっと借りて乗っただけなのに、めちゃくちゃ口の悪い婆さんに叱られたつばめ。婆さんに頼まれてキックボードの乗り方を教えたら、キックボードで空を飛んじゃうって婆さん魔女なの?〝年くったら何だってできるようになるんだ〟って凄すぎ。ファンタジーってことにしないと説明がつかないことの数々。クラゲに掴まって空を飛ぶのは、まるで〝メリー・ポピンズ〟。

14歳の中学生つばめ(清原果耶)は多感なお年頃。思いを寄せているお隣の大学生亨(伊藤健太郎)に夜中恋文を書いて〝きっと朝になれば恥ずかしくて気が変わっちゃうだろうから〟という世間一般の逆をいく発想で、夜のうちにポストの入れに行くって…。そして案の定の後悔の嵐。それを救ってくれたのも空を飛ぶことができる〝星ばあ(桃井かおり)〟の魔力。

本作は、児童書のポプラ社から出版された〝星ばあ〟と14歳の女子中学生とのひと夏の交流を描くジュブナイル。小説では、〝とびきり〟の亨との関係や、最近はただの隣人みたくなって焦ってやらかしちゃった経緯も詳しく書かれていて、今どきの悩み多き少女感満載。もう一つの悩みは、優しい父と明るい育ての母との間に赤ちゃんが生まれることになり、疎外感を抱えてしまっているってこと。そんな、つばめへの〝星ばあ〟からのアドバイスは小説にはない、桃井かおりさんの思いが詰まった言葉。つばめが実の母親に会いに行くシーンも映画で付け足されていて、小説と映画は、パラレルワールドみたいな感じで、見比べるのも面白い。
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