【「星ばぁ」に導かれて】
自分の家族に正直になれない時期ってあったのだろうか?
何か事情があってもしまいこんだり、ある一定の人を家族だと思えなかったり。それが年頃の子供だと尚更で、自分の中の「暗い自分」を見てしまうのである。
そんな人に、「星ばぁ」が現れるのかもしれない。様々な"家族の模様"を見てきた、不思議な老婆…。
「新聞記者」で強烈な印象を残す作品を作った"藤井道人"監督の最新作だ。前作の社会的なイメージから一転し、"家族の変化"に戸惑う少女の青春作品を手掛けたのが、本作だ。
しかもそれにファンタジーな要素を取り入れて、雰囲気はあまり派手すぎない青春ファンタジーになっていた。
前作のようなインパクトは当然ない。しかし、「青の帰り道」を手掛けた藤井監督だからこそ描けた、"年頃の少女の悩み"みたいなものが、そこにはあったのだと思う。その悩みを、突如彼女の前に現れた不思議な老婆「星ばぁ」と共に歩む度、その悩みと向き合うのだ。
そしてこの桃井かおりさん演じる「星ばぁ」なのだが、その"存在を知る人がいない"のだ。なぜ彼女にだけ現れ、なぜいつも屋上にいるのか?実は、そこが物語の肝であって、タイトルにもある通り、「宇宙でいちばんあかるい屋根」が重要になってくるのだ。そこで思った…。
これは「星ばぁ」の物語なのでは?…と。
桃井かおりさんの「星ばぁ」の演技はまさに最高だった。大口なのだが、どこかに"寂しさ"がある「星ばぁ」のキャラクターそのものだったからだ。そしてどこか、癒されるのだ。掛け合わせていいのか分からないが、「幸せへのまわり道」のフレッド・ロジャースのような"寛容さ"を感じた。
様々な"屋根"を、上から見てきた「星ばぁ」と悩める少女。二人が織り成す家族の繋がりの物語は、共に"共通の悩みを抱える者同士"で紡がれた物語になっていた。様々な別れ・後悔…、二人が出会う度にその二つが"和らいでいく様"は、とても見ていても気持ちいい光景であった。
観るものも、"救われた"作品でした。