おときち

宇宙でいちばんあかるい屋根のおときちのレビュー・感想・評価

3.9
余白と余韻。

隣家に住む大学生・亨(伊藤健太郎)に恋する中学3年生・14歳のつばめ(清原果耶)。父親と継母の間にもうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ある夜、書道教室の屋上でちょっと風変わりなおばあさん・星ばあ(桃井かおり)と出会う。「年食ったらなんでもできるんだ」という星ばあにつばめはだんだんと心を開いていき…。


どっぷりではない、ささやかなファンタジー。観る前はちょっと違和感あるかな?なんて思ってたけど、突飛なことばかりが起こるとかではないので、そんなことはなかった。星ばあが何者なのかは置いといて、意外とすんなり楽しむことができた。いや、楽しかった。


空撮も多用した住宅街の風景(区画分けや家々の屋根)もキレイで観ていて気持ちよかった。ただ、星ばあと出会う書道教室の屋上だけが、妙にスタジオでのセット感が強く、ちょっと現実に戻されたりするのが少しだけ残念だった。でも気になったのは最初だけだし、そこだけ。


清原果耶。出演作初めて観ました。瑞々しいとはこのこと。素晴らしかった。目や手の動き、髪を触る仕草まで、それこそ頭の先からつま先、後ろ姿まで完璧だった。
少しだけ込み入った家庭環境といちばん繊細であろう14歳という年齢。
考えていることやちょっと思って取り下げたことなど、心の動きが手に取るようにわかる。すごいなぁと。

つばめの元カレ・誠を演じた醍醐虎汰朗も良かったと思う。あの年世代特有の強さと弱さ。そしてそもそも誠もいい奴で。


桃井かおりは「桃井かおりです」感が強いかと思っていたけど、最初の登場シーンから桃井かおりではなく「星ばあ」であり、それがこのささやかファンタジーもすんなり受け入れられた要因かもしれない。別にファンタジーが苦手とかではありませんが。


一聴してすぐにCoccoの曲だな、とわかる清原果耶が歌う主題歌も良かったですよ。まぁそこまでしなくてもいいんじゃない?と思うわなくもないけど、初主演で主題歌も歌ってって、なんかちょっと昔のスターみたいでいいな。
いろんな表現ができる人はどんどんやればいいと思う。清原果耶これからチェックしておこう。原作好きだから映画は観ていないんだけど『3月のライオン』にも出てるんだね。観てみようかな。


3日連続で映画館に行って、3本連続で日本映画を観たの初めてかもしれない。その中では今作がいちばん面白かったし、観に行って良かったーと思える作品でした。