岡田拓朗

宇宙でいちばんあかるい屋根の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

4.0
宇宙でいちばんあかるい屋根

私はどんな屋根の下で生まれたんだろう。

この世界の片隅に広がっていそうな少女の成長物語が、綺麗で幻想的な演出により、かけがえのない壮大な物語として昇華されていく。

辛いこと、後ろめたいこと、よいことなど…色んなことを優しさで包み込みながら後押ししていく極上の眼福映画。

物語として若干冗長さは感じたが、そんなの関係ない。
映し出される世界にずっと入り浸っていたくなった。

主人公である大石つばめ(清原果耶)は、思春期であり年頃の女の子。
産みの親ではない母親麻子(坂井真紀)に育てられてきた。
麻子には、もうすぐ生まれる赤ちゃんがお腹の中にいる。
つばめは隣に住む浅倉亨(伊藤健太郎)に恋をしていて、その恋と赤ちゃんが生まれてくることに対しての楽しみと不安、そして両親に対しての複雑な心境に、思い悩みながら日々を過ごていた。

通っている書道教室の屋上で、星ばあ(桃井かおり)という謎のおばあちゃんに出会い、物語は色んな方向に進んでいき、その出会いと関わりを通して、成長していくつばめが描かれていく。

少女とおばあちゃんが出会うことによって、お互いによい影響を与え合っていき、お互い一人では決してたどり着くことができなかった場所に行ったり、経験ができたり、成長ができたり。
そんな2人の関係がとても愛おしい。

星ばあは口が悪いところがあって、その口調はこの映画に必要なのだろうかと感じたが、優しさがベースになっていると、その部分はさほど気にならないし、むしろそれによりつばめが心を開けて、星ばあに言いたいことをちゃんと言えるようになっていけてる感じがして、それはそれでよかったのかなと。

人は出会いによって人生が大きく変わることがある。
一人ではできなかったことができるようになったり、踏み出せなかった一歩が踏み出せるようになったり、知らなかったことを知ることができたり、心残りだったことを実現することができたり。
ただそれは出会うだけでなく、誰かと関わり続けて影響されることが大切。

屋根の下で暮らすことは人と人とが関わり続けること。
その関わり合いをどうしていくかだけでも、大きく人生が変わることをこの映画では教えてくれているような気がする。

同じ屋根の下で生活を共にするからこそ育めること、そしてそれ以外の屋根を見られる関係だからこそお互いで共有し合えることがあることを気づかせてくれて、その感覚のよさに対して、自然と腑に落ちた感じがした。

屋根を見ることで、その下にはどんな生活が広がっているのかを想像する。
そこから自分が今までどんな屋根の下で暮らしていたんだろうか、これからどんな屋根を作っていきたいのか、屋根の下での生活を営んでいくのかを想像しながら、話していく時間って素敵だなと思う。

年齢関係なくそれぞれに与えること/与えられることがあるという、少女の成長を受け手として描くだけでなく、与え手としてまでを描いていく姿勢も好印象。

鑑賞後はとにかく高い所に行って、色んな屋根を見たくなる。
そして、たくさんの屋根の下にある生活を想像したくなる。

映像と物語ともに、美しくて綺麗な世界観に浸りたい方は特におすすめです!

P.S.
キャストとしては、主演である清原果耶さんの演技が物凄くよかった。
感情の移り変わりの表現、場面に応じて臨機応変に変えられる表情、他の作品では大人っぽく見える彼女も、本作ではちゃんとあどけない一面もあって、清原果耶さんのさらなる色んな面を見られる作品になってるかなと。
ミステリアスな雰囲気も出せるし、こういう感情の起伏がある等身大な少女の役もしっかりとこなせる。
18歳というのが信じられない将来が楽しみすぎる女優さんです。
そして伊藤健太郎さんは学生×二枚目の役が完全に板についてきてますね!
『のぼる小寺さん』のときにも思ったけど、ヒロインを引き立てることに徹することができる俳優だなと思った。
それでいてちゃんと存在感を絶妙に残せている。
色んな作品で引っ張りだこになってる理由がわかります。
岡田拓朗

岡田拓朗