このレビューはネタバレを含みます
佐々木、インマイマイン最高。
俳優・細川岳が、自分の友人をモデルにした破天荒な役・佐々木を考案、自ら佐々木を演じた青春映画。「King Gnu」や平井堅のMVなどを手がける内山拓也監督がメガホンをとった。
上京して俳優を目指して奮闘するも芽が出ず、彼女のユキにも同居は続けながらもフラれている悠二。彼は高校時代の友人・多田と再会、そして自身に俳優の道を勧めてくれた友人で滅茶苦茶な男・佐々木のことを思い出す。
細川岳の友人という極めて個人的な部分から生まれた佐々木というキャラクターだが、万人に「無限の可能性を秘めていたあの頃」を思い出させてくれる普遍的キャラクターになっている。
正確に言うと「無限の可能性を秘めていると思っていたあの頃」なのだが。
大半は何者にもなれないし、思い通りの人生は歩めない。
それでも何かになりたい、何かを成し遂げたいと思う主人公の前に現れる佐々木。
もはや「青春」そのものの象徴のように見えてくる。
後先考えない、その時の感情優先、無駄に強がり、恥はいくらでもかく。
自分の青春時代がそんなに猪突猛進だったかと言われればそうでもないのだが、でも周りにいたあの人やこの人を思い出して懐かしくなり、自分にもほんの少しだけ佐々木と通じる部分があったと思い返してしまった。
だからこそ、終盤に佐々木が迎えるある顛末にはとても響くものがある。
その出来事を受けての、藤原季節演じる悠二の独白しながらの疾走も素晴らしかった。彼は日本映画界を今後もずっと支えていく存在になるのではないか。
わき役もみんなよかったが、特に佐々木と不思議な関係になる不思議な顔つきの女子・苗村を演じた河合優実の演技が絶品だった。
誰もがいつまでも若くはいられないし、可能性ばかりを追い求めてもいられない。可能性の扉はどんどん閉じていく。
そんな切ない感傷を抱きながら見ているとまさかの結末を迎える本作。
あれをどう思うかは人それぞれ、筆者としてはとんでもなく刺さってしまったが、皆さんはいかがでしょうか。今年の青春映画の中では最重要作の一つだと思う。