えいがうるふ

グッバイ、レーニン!のえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

タイトルから勝手にマルクスやらレーニン主義やらのイデオロギーを扱った小難しい社会派作品かと思っていたが、なんなら小学生でも高学年なら十分楽しめそうな、大変分かりやすく面白い秀作だった。

母が選んだ道を尊重し残り少ない人生をまっとうさせるべく、無茶な工作に挑むアレックス。
母親は母親で、ある段階からそんな息子の優しい嘘に気がついていたのだろうが、息子に感謝しつつ騙されてあげていた節がある。
そして、そんなアレックスの無謀を非難しつつも最終的にはそれが無駄にならないよう余計なことは言わずに見守るララ。親友の為に文字通り体を張ってフェイクニュースを作ってくれた映像オタクのデニス。
なんて優しくて愛おしい人達だろう。

終盤の母の告白によるどんでん返しからアレックスの意地への伏線回収にふふむふむと感心し、デニス渾身制作の最後のフェイクニュースでのイエーンのスピーチがまた予想以上に素晴らしい内容で素直に感動した。
切ないけれど、花火と重なるロケット打ち上げと母の幸せそうな笑顔が心に残る、後味のよい着地だった。

もうひとつ印象的だったこと。東西ドイツの統一直後の複雑な国民感情を和解させるのにサッカーのW杯が大きな一役を買っていたことを描いていたのも何とも爽やかだった。
見事に実を結んだスポーツによる国際親善。本来スポーツの祭典とはこうあるべきだよなぁ・・・と、今年日本で開催されるはずだった利権まみれの巨大イベントのことをチラリと考えた。